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会計検査院が指摘!
賃貸住宅オーナーをめぐる消費税節税スキーム
●  消費税の課税の仕組みを利用した節税とは?
  2009年10月4日付の日本経済新聞に「賃貸住宅事業者の消費税還付 自販機設置で8億円 2006年度分検査院指摘」という見出し記事が掲載された。
  消費税は最終的に消費者が負担するが、納税については多段階式に消費税課税事業者が売上の際に「預かった消費税」と、仕入れなどの際に「支払った消費税」との差額を納める仕組みになっている。原則として「預かった消費税>支払った消費税」の場合は差額を納税し、「預かった消費税<支払った消費税」の場合は差額の還付を受けることになる。また、消費税法30条において、売上の95%以上が課税対象の場合は仕入れなどにかかった消費税の全額を支払った消費税とすることができる。先述の賃貸住宅建築の場合、「預かった消費税<支払った消費税」となるようにし、建築費に係る消費税の還付を受けるというものだ。
●  土地や住宅の貸付けは非課税
  消費税は国内において消費されるものを課税対象とするが、土地および住宅の貸付けについては非課税とされている。つまり、住宅に係る家賃収入は非課税売上のため課税売上は0であり、非課税売上に対応する賃貸住宅建築費に係る消費税については還付を受けることはできない。
  そこで、賃貸住宅が完成する年において家賃収入を発生しないようにし、飲料水などの自動販売機を1台設置することで課税売上が100%となるようにする。そうすれば、例えば自動販売機の売上が105,000円、建物の建築費が210,000,000円とした場合、5,000円−10,000,000円=9,995,000円の消費税の還付が受けられることになる。
●  消費税の還付は課税事業者しか受けられない
  個人事業者は前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合は免税事業者である。または新規事業者の場合、2年間は免税事業者である。免税事業者は消費税を納める義務がないかわりに、還付を受ける権利もない。そこで、消費税の還付を受けようとする場合には、必ず課税事業者となる年の前日までに、または新規事業者の場合は事業開始年の末日までに、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなければならない。消費税の届出については、所得税申告書のように提出期限が土日祝日に該当するため休み明けとなるような特例は設けられていないので、注意する必要がある。また、課税事業者の選択は2年縛りとなるので、2年間での損得を計算することになる。
●  今後の動向に注目
  賃貸住宅オーナーによる自動販売機を利用した節税スキームは、不動産業界に浸透しており、会計検査院が全国の46税務署をサンプル調査したところ、2006年度分で約8億円も還付があったそうである。以前より税の公正という観点から問題視されてきたが、「民主党政策集 INDEX2009 税制 徴税の適正化」において「消費税の還付額が年間3兆円にも達していますが、その中に相当額の不正な還付が存在します。これを防止するため、還付に係わる調査機能を強化します」と記載されている。消費税は広く浅く公平に負担できる税金ということを鑑み、今後は改正の方向になると思われる。
(今村京子 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2009.10.26
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