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火災保険が変わる その1
  2006年に発覚した火災保険の保険料取り過ぎ問題の再発防止策として、損害保険会社各社は火災保険の保険料区分の、大幅な見直しを行うことになった。建物の種類ごとに適用される保険料区分を間違ってしまったことが、保険料取り過ぎの主な原因だったためだ。こちらは次回以降、取り上げる予定。
  これとは別に、火災保険の保険金の支払い方法にも大きな変化が起こっている。実損払いへの転換である。火災保険には損害種類ごとにさまざまな決め事があるため、実際の損害額より少ない金額の保険金しか支払われないケースがあり、加入者の不信を招く一因ともなっていた。そういった不信や不満を減らすような新商品が発売されている。
●  自然災害の補償を手厚く
  火災保険は近年、補償範囲を広げて外部からの物体の落下や衝突、盗難などまで補償する住宅保険として広まりつつある。台風などの自然災害が多い日本では、マイホームという財産を守るために必要な保険である。
  とはいっても、住宅保険はすべての災害やトラブルに対応できるわけではない。「地震による火災では火災保険金は支払われない。別途地震保険への加入が必要(地震保険の保険金額は火災保険の50%が上限)」ということは、阪神大震災をはじめとする最近の大地震の影響で知られるようになったが、このほかにも、「風災・ひょう災・雪災」では、損害額20万円未満では保険金は支払われない、集中豪雨などによる「水災」では損害割合によって保険金額が決まり、最大でも損害額の70%までしか補償されないなどは、一般にはあまり知られていない。そのため、実際に被災した加入者が「こんなはずではなかった」と困惑するケースがあったようだ。
  より手厚い補償を求める加入者のニーズに応えるため、「風災・ひょう災・雪災」や「水災」において、実際の損害額の保険金が支払われる「実損型」を導入した商品が投入されている。特約などで、地震による火災の際も100%の補償が得られる商品もある。
●  特約なしでも実損で補償
  従来タイプの火災保険では、時価より少ない保険金額で加入していた(一部保険:図表参照)ときには、受取れる保険金額は実際の損害額より少なくなることがあった(ただし、価額協定保険特約を付加してあれば、実損で支払われる)。
     図表:従来型の火災保険の支払保険金額の計算方法
計算式:支払われる金額 = 損害額 × 保険金額/(時価×80%)
         時価より加入している保険金額が少ない場合(一部保険)
              時価1,000万円、保険金額600万円、損害額500万円
                → 375万円 : 500万円×{ 600万円/(1,000万円×80%)}
  実際の運用(保険金の支払い)では、2〜3割程度の誤差は調整されており、また前述の価額協定保険特約を付加してあれば、建物や家財などを再取得するための費用分の保険金が支払われている。新商品では特約ではなくあらかじめ組み込んでいるものもある。少しでも誤解やトラブルを減らす対策として評価できる。
  とはいえ、補償を広げれば保険料も当然高くなる。保険料区分見直しとの相乗効果で、マンションや一部の耐火構造の建物を除き、大幅な保険料引き上げとなるケースもあるようだ。加入者の立場からは、家計節約のため余分な保険料を払わずに済むように、加入時にはより厳密に保険金額を設定する必要性が出てくるだろう。
  なお、実際の支払いにあたっては、主たる保険金額のほかに、失火見舞い費用や残存物片づけ費用、臨時費用などの費用保険金が、別途支払われるので、そういった支払内容についてもチェックしておきたい。
(山田静江 CFP®)
2009.10.26
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