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大工、左官等に係る所得税の取扱いを見直し
●  1953年に規定された現行通達を廃止
  国税庁はこのほど、大工、左官、とび等が受ける報酬に係る所得税の取扱いを示した通達を見直すことを明らかにした。1953(昭和28)年に規定された同通達を廃止し、新たな取扱いを定める。
  現行の取扱いにおいては、個々の収入の性質に応じ請負契約に基づくものは事業所得とし、雇用契約に基づくものは給与所得とする基本に問題はないが、特殊なのはその区分が明らかでない者が受ける報酬の取扱いである。
  それは、その年中を通じ職人として一定の親方に所属している者の受ける労務の報酬は、原則として、給与所得の収入金額とするが、常時使用人その他の従業員がおらず、また職人として一定の親方に所属もしていない、いわゆる一人親方の受ける報酬については、その年収(報酬)が450万円以下であるときは、原則として、その年収額にその金額の多寡に応じて、一定割合を乗じた金額を給与所得とし、その残額を事業所得とするものだ。
  例えば、年収額が100万円の場合は、80%の80万円が給与所得、残りの20万円が事業所得とされ、年収額が400万円の場合は、10%の40万円が給与所得、残りの360万円が事業所得とされるなど、年収額に応じて8段階に区分されている。
  所得税法に定める一般的な給与と報酬の所得区分では、区分が明らかでないときは一定事項を総合勘案して給与所得か報酬(事業所得または雑所得)かを判定するが、これまで一人親方の場合は、一般的には給与所得とされる他の親方との指揮・命令の元に働いたケースでも、その年中を通じ職人として一定の親方に所属していなければ、年収に応じた一定割合を機械的に事業所得とされてきたわけだ。
●  事業所得と給与所得との区分を明確化
  新たな取扱い案では、まず、事業所得とは、自己の計算において独立して行われる事業から生ずる所得をいい、例えば、請負契約またはこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価は事業所得に該当し、また、雇用契約またはこれに準ずる契約に基づく役務の提供の対価は、事業所得に該当せず、給与所得に該当するとの基本を示している。
  したがって、大工、左官、とび職等が、建設、据付け、組立てその他これらに類する作業において、業務を遂行しまたは役務を提供したことの対価として支払を受けた報酬に係る所得区分は、その報酬が、請負契約もしくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのか、または、雇用契約もしくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのかにより判定するのであるから留意するとしている。
  その上で、その区分が明らかでないときは、以下の事項を総合勘案して判定するものとされる。
(1)他人が代替して業務を遂行または役務を提供することが認められるかどうか
(2)報酬の支払者から作業時間を指定されるなど時間的な拘束を受けるかどうか
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受けるかどうか
(4)まだ引き渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務または提供した役務に係る報酬の支払いを請求できるかどうか
(5)材料または用具等(釘材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く)を報酬の支払者から供与されているかどうか
などが判定要素として示されている。
  これらの事項を総合勘案し、個々の実情に即して給与所得であるか事業所得であるかを判定するわけだから、所得税法における一般的な給与と報酬の所得区分と同様の明確な取扱いとなるといえる。
  この新しい取扱い通達についての改正案は、バブリックコメントとして11月5日まで意見が募集される。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.10.26
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