>  今週のトピックス >  No.1931
増加する国民医療費
●  過去最高を記録した国民医療費
  去る9月、厚生労働省より「平成19年度 国民医療費の状況」が発表された。これによると年間の国民医療費は34兆1,360億円、前年度の33兆1,276億円に比べて1兆84億円、 3.0%の増加となっている。
  人口一人当たりに換算すると26万7,200円であり、前年度の25万9,300円に比べ、やはり3.0%の増加である。
  また、この国民医療費の国民所得(約375兆円)に対する比率は9.11%と、これも前年度の8.87%に比べて増加している。
  このように「国民医療費の総額」「人口一人当たり国民医療費」「国民医療費の国民所得に対する比率」のいずれも過去最大となっている。
●  国民医療費とは?
  さて、この「国民医療費」はいったいどこまでの範囲を指しているのだろう。
  「国民医療費」とは「当該年度内の医療機関等における傷病の治療に要する費用を推計したもの」と定義されている。この中には診療費、調剤費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費のほかに、健康保険等で支給される移送費等を含んでいる。
  しかし、「正常な妊娠や分娩等に要する費用」「健康の維持・増進を目的とした健康診断・予防接種等に要する費用」「固定した身体障害のために必要とする義眼や義肢等の費用」は含まれない。そしてもちろんのことながら、差額ベッド代といわれる「入院時室料差額分」 や、健康診断費用である「集団検診費」「人間ドック代」なども含まれていない。
●  年齢別の国民医療費は?
  以下は国民医療費(平成19年度)を年齢階級別にみたものである。
年齢階級 推計額 構成割合 人口一人当たり
国民医療費
0〜14歳 2兆3,269億円 6.8% 134.6千円
15〜44歳 4兆9,920億円 14.6% 103.3千円
45〜64歳 9兆0,732億円 26.6% 261.6千円
65歳以上 17兆7,439億円 52.0% 646.1千円
  ひと目見てお分かりのように、65歳以上の金額と割合が突出している。
  さらに上の表には記載していないが、長寿医療制度(後期高齢者医療制度)の対象となる75歳以上では推計額10兆893億円であり、全年齢合計の国民医療費である34兆1,360億円の実に29.6%を占めている。総人口に占める75歳以上の方の比率は約1割(1,300万人弱)であるので、高齢者層にかかる医療費がいかに莫大なものであるかがご理解いただけるだろう。
  ちなみに75歳以上の人口一人当たり国民医療費は79万4,200円である。これは国民年金から支給される老齢基礎年金の満額79万2,100円よりも多い。
●  長寿医療制度の行く末は?
  長寿医療制度の負担金のあおりを受け、健康保険組合の財源が非常に厳しい状況になっている。民主党政権は長寿医療制度の廃止を明言しているが、先に見たように高齢者層の医療費は莫大である。その財源を誰が負担するのかによって後継制度の姿は大きく変わるのであろう。
  負担のなすりつけ合いの議論も出てくるのであろうが、民間生保に加入した場合には保険料負担を軽減し、給付の一部も民間生保が負う等、官民一体となった制度設計などできないものだろうか。
  今後の長寿医療制度の行く末は“注目!”である。
参考:厚生労働省「平成19年度 国民医療費の概況」
http://www.mhlw.go.jp/za/0902/d01/d01.html
2009.11.02
前のページにもどる
ページトップへ