>  今週のトピックス >  No.1932
債務免除、DES実行における留意点
●  同族会社の債務免除、留保金課税に注意
  最近、会社再建等の過程で債務免除やDES(デット・エクィティ・スワップ)といった手法をよく見かける。これは大企業に限ったことではなく、中小企業でも同様である。今回はこれらの手法を利用する際の注意点を解説する。
  中小企業においては、債務超過を解消するためにオーナー社長や関係会社からの借入金について債務免除を検討することがある。このとき、繰越欠損金の範囲内で債務免除を行えば一般的には法人税等は課税されない。ただしその場合、繰越欠損金が期限切れになる前に実行することが必要となる。会社更生法や民事再生法などに基づいた一定の法的整理等の場合には期限切れ欠損金を利用できる特例があるが、そうでない場合には期限切れになる前の通常の繰越欠損金しか相殺の対象にはならないからである。債務免除を検討する際には、繰越欠損金が消滅する時期を把握した上で、実行することが必要となる。
  なお、同族会社の留保金課税の対象となる会社については、繰越欠損金があっても法人税等が課税されることがある。これは、留保金課税が繰越欠損金控除前の留保所得に対して課税する仕組みとなっているためである。平成19年度税制改正において資本金が1億円以下の中小企業は留保金課税の対象外となっているが、それ以外の会社は注意が必要である。
●  みなし贈与が適用される場合あり
  また、同族オーナーの関係会社間で債務免除を行うときには、債権放棄した会社側も課税リスクを負うことになる。要件を満たしていれば貸倒損失として処理できるが、時期尚早と判断されれば寄付金として一定限度額を超える金額は課税対象とされてしまう。関係会社間で債務免除を行う際には、そうならないための客観的な判断が必要となる。
  さらに見落としがちなのは、債務免除に伴うみなし贈与の問題である。オーナー社長以外にも複数の同族株主が存在する同族会社で、オーナー社長からの借入金を債務免除した場合、その債務免除により他の同族株主が所有する株式の価額が増加する場合がある。この場合には、オーナー社長からその同族株主に贈与があったものとみなされる恐れがあるため、十分に注意したい。
●  平成18年度改正によりDESにも課税リスクあり
  債務超過を解消する方法は債務免除以外にもDESがある。債務免除は税務上の繰越欠損金を減らすことになるが、DESの場合には直接自己資本に振り替えるため、原則税務上の繰越欠損金を使わずに実行できるというメリットがある。しかしその反面、債務免除と違い登記費用がかかり、資本金が増えることにより法人住民税の均等割が増える、などの問題がある。債務免除の場合と同様、上記のみなし贈与の問題もある。さらに平成18年度税制改正においてDESについての改正が行われたことにより、現物出資の対象となる債権の額面と時価の差額について課税リスクが生じることとなった。いずれにも一長一短があるので、検討する際には総合的に判断していただきたい。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2009.11.02
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