>  今週のトピックス >  No.1933
役職定年制度の導入率は、36.3%
●  中高年層の活用は大きな経営課題
  「2007年問題」などとして取り上げられることが多かった団塊世代は、定年を迎え大量に退職した。その後も中高年層の活用については大きな経営課題となっており、各企業はいろいろ対応に苦労していることは確かである。
  そのような状況の中で、このたび産労総合研究所から「2009年 中高年層の処遇と出向・転籍等の実態に関する調査」が発表され、その実態が明らかになった。特に中高年層の賃金の取り扱い、役職定年制度などは、いずれの企業にとっても気になるところであるといえるだろう。
  この調査は、1993年よりほぼ3年ごとに行われており今回が第6回になるが、リーマンショック後の景気が低迷しているなかで、前回と比較してどのように変化しているのかという点にも注目してみる必要があるといえる。
●  減額の開始年齢は、「55歳」からが、38.5%
  調査結果によると一定年齢で賃金減額を行う企業は、これまでは調査開始以来一貫して減少傾向にあったが、今回は前回(32.0%)とほぼ同じく34.5%となった。また減額の対象は、「全社員」と答えたのが74.5%で、「一般職のみ」(14.3%)や「管理職のみ」(3.1%)を対象とする企業は少数派である。
  また減額を行う場合の開始年齢は、「55歳」が38.5%ということで一番多く、続いて「56歳」となった。基本的賃金の平均的な減額率は13.6%で、前回の13.0%からほぼ横ばいだが、賞与・一時金の平均的減額率は、22.8%で、前回の35.3%と比べると低くなっている。不況期においては、一般的な人がもらう賞与そのものが減額されたので、減額率はそれほど低くならなかったとも読み取ることができる。
●  役職定年後は、役職手当は「支給しない」が47.6%
  「役職定年制度」は、一定年齢に達したことをもって役職を離脱させる制度であるが、中高齢層のモチベーションに大きな影響があるともいわれており、制度設計は慎重に行わなければならない。
  今回の調査結果における役職定年制度の導入状況をみると、「ある」企業が36.3%、「ない」企業が、61.6%となっており、ない企業の割合がまだまだ多い。役職定年後の賃金については最も気になるところであるが、役職定年後は、役職手当は「支給しない」が47.6%、「減額する」が27.2%、「もともと役職手当がない」が18.4%となった。
  実際の運用面では、一部役職にとどまる人がいて柔軟に対応していると答える企業も結構多いが、社員の納得が得られれば、問題はないだろう。
  役職定年制度は、人事の新陳代謝を促し、組織の活性化や若手の育成、モチベーションの向上を図るとともに、人件費コストの増加を抑える狙いがあり、人事戦略上も欠かすことができない制度となっている。導入していない企業もまだまだあるが、企業風土などを考えながら、柔軟に運用していけば、総合的にみて企業経営にプラスになる可能性は高いといえるのではないだろうか。
 参考:産労総合研究所 「2009年 中高年層の処遇と出向・転籍等の実態に関する調査」
http://www.e-sanro.net/sri/ilibrary/pressrelease/press_files/sanro_p091015.pdf
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.11.02
前のページにもどる
ページトップへ