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保険業界のADR(裁判外紛争解決支援制度)への取組み
  ADR(裁判外紛争解決支援制度)をご存じだろうか。ADRとは、訴訟手続きによらずに、民事上の紛争を解決しようとする当事者間の紛争解決のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続きをいう。日本では2007年4月にADR促進法が施行され、また今年になって金融商品取引法(以下、金商法)の一部改正(保険業法も改正)により金融ADR制度が法制化されている。
●  生保・損保協会はADRの認定投資者保護団体へ
  金商法では、金商法上の自主規制機関団体以外の苦情解決・あっせん業務を行う民間団体を自主申請により認定している。保険業界では、2007年に生命保険協会(以下、生保協会)の裁定審査会が認定を取得し、2008年には日本損害保険協会(以下、損保協会)の損害保険調停委員会も認定団体となっている。
  生保協会には「生命保険相談所」、損保協会には「そんがい保険相談室」という相談窓口があり、消費者(契約者)による業者(保険会社)への苦情解決機関としての業務を行っているが、そこで解決できない事案については、それぞれ裁定審査会、損害保険調停委員会で独自に紛争解決支援をしてきた。それがADR法においても認定されたということだ。
●  生保協会の裁定審査会の運営
  裁定審査会は、2001年に設置された生命保険業界の私的ADR機関であり、弁護士と消費生活相談員それぞれ4名と、生命保険相談室長の計9名で構成されている。
  生命保険相談所へ消費者から申し出のあった苦情につき、まずは相談所で情報提供や助言などを行って会社へ解決を依頼。それで解決しない場合に、裁定審査会で扱う事案かどうか適格性を審理する。
  上記を経て、裁定審査会で裁定を行うことが適格であると認められた場合には、事実確認により紛争内容を審理し、和解案を作成・提示するなどの紛争解決支援を行う(不適格の場合は理由を明示して不受理)。事実確認が困難、和解案を受け入れられないなど、裁定がうまく行かない場合には裁判等での解決になることもある。

  生保業界の場合、日本で保険業の免許を取得する場合には、各社は指定紛争解決機関である生保協会の裁定審査会と以下の契約の締結することになる。
(1)苦情処理・紛争解決手続きへの参加義務
(2)手続きにおける事情説明・資料提出などの協力義務
(3)紛争解決委員の提示する和解案の尊重義務
  金融制度が複雑になる中、日本でも消費者保護の機運が高まっており、その一環としてADRが法制化されたわけだ。保険会社は契約者とのやりとりにおいて、これまで以上に慎重な対応が求められるだろう。
  参考:生命保険協会主催勉強会(2009.10.29)
「生命保険協会の『裁定審査会』とADRの動向」
(山田静江 CFP®)
2009.11.09
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