>  今週のトピックス >  No.1938
中長期では「円安・株安・債券高」
●  為替以外は予想的中
  早いもので今年も残すところあと2カ月となった。昨年の今ごろはリーマン・ショックの余波で世界の金融市場は大荒れだった。今年に入って落ち着きを取り戻しているが、依然として日米の株価が低迷するなど不況脱却の糸口は見えない。少し早いが今年の経済情勢を総括し、今後どのような展開が考えられるのか頭の体操をしてみたい。
  筆者は年初の「今週のトピックス1778」で、2009年の世界経済は一言で言えば「世界同時大不況」であると指摘し、日経平均株価の予想レンジを7,000円〜1万1,000円、長期金利を1〜1.5%、ドル円相場は1ドル=80〜100円と予想した。7月の時点で最悪期を脱したと判断し、日経平均を8,000〜1万1,000円、円相場を1ドル=90〜105円に修正した。為替が円安方向に行かなかったことを除けば、概ね筆者が想定した通りに推移した。
●  意外なドル安、長続きするか?
  この1年で最も意外だったのはドル安の進行だ。対円でいまだに1ドル=90円前後の水準にとどまっていることは、想定外だった。もちろん、米国経済について楽観していたわけではない。だが、米国以上に日本経済が悪化すると考えていたので1ドル=100円に向けて円安になると読んでいたのだ。
  米国経済は日本がバブル崩壊後に陥った停滞を経験するに違いない、というのが筆者の見立てだ。日本ほど長期間ではないだろうが、おそらく3年程度は回復できないと考えている。その最大の要因は、金融危機で傷を負った金融機関の貸し渋りだ。中央銀行がいかに金利を引き下げて金融緩和しようとも、中央銀行と市中をつなぐ金融機関が貸し渋るため資金が滞留して経済が停滞するという考え方は、これまで再三指摘してきたとおりだ。
  米国経済が停滞して最も影響を受けるのが、米国経済に依存する外需型の日本だ。民主党政権がいかに内需振興策に力を入れても、人口が増えないうえ高齢化が進む以上、あまり意味はないだろう。円がドルよりも強い今の状況が長期的に続くとは考えにくい。米国経済が徐々に回復するにつれて、円安がじわじわと続くのではないか。
●  日本売りに注意
  円安は日本企業の株価にとっては追い風だが、株価が勢いよく上昇する場面は当面ないとみている。少なくも来年1年間は日経平均が1万円を中心に行ったり来たりするレンジ相場になるのではないか。売買シェアの5割を握る外国人は成長の見込みのない日本の株を買うくらいなら、新興国の株を買うだろう。唯一の買い手ともいえる個人投資家には不況のあおりで余裕資金はない。
  民主党政権の財政不安から足元上昇している金利も、今後それほど上がるとは思えない。これまで指摘してきたとおり、デフレ下では金融機関の滞留(余剰)資金が安全資産の債券に向かう。金利が上昇すれば、投資妙味が出て国内金融機関が喜んで債券を買う。こういう状況はそう簡単に変わらないだろう。大きな流れは「日本売り」による株安と円安、そしてデフレによる債券高である。この見方を当面変えるつもりはない。
2009.11.09
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