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法人の黒字申告割合は初の30%割れの29.1%
●  法人税申告税額は33%減の9兆7,077億円と大幅減少
  国税庁がまとめた2008事務年度の法人税の申告事績によると、今年6月末現在の法人数は前年度に比べ1千法人減の300万2千法人で、うち今年7月までの1年間に申告したのは過去最高だった前年度からは4千法人減の280万5千法人だった。その申告所得金額は同35.4%(20兆8,370億円)減の37兆9,874億円、申告税額の総額も同33.2%(4兆8,244億円)減の9兆7,077億円と、ともに大幅に減少した。
  今回から申告事績の集計対象期間を「4〜3月決算ベース」(従来は「7〜6月申告ベース」)に変更しているが、申告所得金額、申告税額ともに2年連続の減少となる。申告所得金額の減少額・減少率はともに集計可能な1967年度以降で最大となる。
  この結果、法人の黒字申告割合は29.1%と、前年度に比べ3.3ポイント減少しており、初めて30%を割り込んで過去最低となった。景気後退で企業業績が大きく悪化したことが要因とみられる。
  法人の黒字申告割合は、過去最高だった1973年度(65.4%)の半分にも満たない低い数字が16年も続いている。
  黒字法人の申告所得金額も大幅減少となり、黒字申告1件あたりでは4,653万円で前年度に比べ28.1%の大幅減少となった。一方で申告欠損金額は、同86.8%増の30兆9,291億円と、ピークの2002年度(33兆116億円)に迫る勢いだ。赤字申告1件あたりの欠損金額は同78.5%増の1,556万円だった。
●  法人の申告漏れ総額、大幅減の1兆3,255億円
  一方、国税庁が発表した今年6月までの1年間(2008事務年度)における法人税調査事績によると、不正計算が想定されるなど調査必要度の高い14万6千法人(前年度比0.9%減)を実地調査した結果、うち72.6%にあたる10万6千件(同2.2%減)から前年度に比べ18.5%減の総額1兆3,255億円の申告漏れを見つけた。加算税額516億円を含む3,272億円(同16.5%減)を追徴。1件あたりの申告漏れは911万円となる。
  申告漏れ総額は2年連続の減少となり、景気悪化で法人所得が落ち込んだことなどから、1986事務年度(1兆2,256億円)以来22年ぶりの低水準。減少率も1999事務年度(34.2%)に次ぐ過去2番目の大きさ。また、調査した21.5%にあたる3万1千件が故意に所得を仮装・隠ぺいするなどの不正を行っており、その不正脱漏所得は4,195億円だった。1件あたりの不正脱漏所得は前年度比0.1%増の1,338万円と6年ぶりに増加した。
●  不正発見割合の高い業種は「バー・クラブ」が7年連続ワースト1位
  不正を業種別(調査件数350件以上)にみると、不正発見割合の高い10業種では、「バー・クラブ」が56.1%で7年連続のワースト1位となった。「バー・クラブ」は2000年度まで14年連続1位という不名誉な記録を続けていたワースト業種の常連(唯一2001年度がワースト2位)。次いでこれも常連の「パチンコ」(46.4%)が続き、この2業種は6年連続でワースト1、2位となっている。3位は「廃棄物処理」(37.0%)。
  一方、1件あたりの不正脱漏所得金額が大きい10業種では、トップが前年4位の「パチンコ」(5,364万円)、次いで前年1位の「建売、土地売買」(3,063万円)、3、4、5位はすべて前年ランク外の「貿易」(2,798万円)、「電気・通信機械器具卸売」(2,701万円)、「鉄鋼卸売」(2,432万円)。不正発見割合でワースト1位の「バー・クラブ」は高額10業種に入っておらず、1件あたりの不正脱漏所得金額は1,102万円と相対的に少ない。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.11.16
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