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赤字法人調査で約14%の約7千件が黒字に転換
●  実地調査全体の34%が無所得申告法人の調査
  今年6月までの1年間(2008事務年度)における法人の黒字申告割合は29.1%と初めて30%を割り込み、7割強の法人が赤字となった。ところが、このような状況に便乗して実際は黒字なのに赤字を装う企業が後を絶たない。
  2008事務年度中に法人税の実地調査をした14万6千件のうち約34%にあたる4万9千件は無所得申告法人の調査に充てられ、うち14.1%の6,956件が実際は黒字だったことが、国税庁のまとめで判明した。
●  1件あたりの申告漏れ所得は1,458万円と高額
  調査結果によると、実地調査した4万9千件のうち約70%にあたる3万4千件から総額5,006億円にのぼる申告漏れ所得金額を見つけ、加算税額を含む396億円の税額を追徴した(消費税の追徴税額は207億円)。調査1件あたりの申告漏れ所得金額は1,458万円となる。また、実地調査したうちの4件に1件(約25%)の1万2千件は仮装・隠ぺいなど故意に所得をごまかしており、その不正脱漏所得金額は1,581億円にのぼった。
  2008事務年度の無所得申告法人調査は、前年度に比べ6.6%増の実地調査を行い、申告漏れ件数が5.3%増、不正計算のあった件数6.2%増とともに増えている。この結果、黒字となった法人が約7千社あったわけだが、調査で把握された1件あたりの申告漏れ所得1,458万円は、前年度より13.6%増加しており、法人全体の平均991万円を大幅に上回る。不正申告1件あたりの不正脱漏所得金額は1,310万円となっている。
●  法人の消費税不正還付で追徴税額167億円
  一方、消費税は主要な税目の一つであり、預かり金的な性格を有するため、国民の関心が極めて高く、税収等の面でもその位置付けが高まっている。このような状況下、消費税について虚偽の申告により不正に還付金を得るケースが見受けられることから、企業に対する消費税調査はほとんどが法人税との同時調査だが、最近は、輸出企業を中心とした消費税単独の不正還付調査が増えている。
  これは、消費税法では商品の輸出や国際輸送、国際電話、国際郵便などの輸出取引に該当する場合、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考えに基づき、消費税を免除していることを悪用し、虚偽の申告により不正に還付金を得るケースが見受けられるためだ。今年6月までの1年間(2008事務年度)においては、1万1,202件の消費税還付法人に対する調査が実施された。
  その結果、167億700万円にのぼる消費税額を追徴した。また、そのうちの1,165件は虚偽の申告により不正に還付を受けていたことも判明している。前事務年度と比べると、大口事案が少なかったことから追徴税額は28.0%減少しているものの、調査件数は30.2%増加し、不正件数も20.0%増加していることから、国税当局が消費税不正還付に積極的に取り組んでいることがうかがえる。
  消費税不正還付の事例をみると、海外で人気の高い自動車などを輸出したなどと装い税務署に虚偽の還付申告書を提出した「中古車輸出業者」や、国内で仕入れた電子部品を中国に輸出したとして、架空の輸出免税売上および架空の仕入を計上した虚偽の申告書を税務署に提出し、消費税の不正還付を受けていた「電子部品輸出販売会社」などが明らかにされている。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.11.24
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