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年金保険の権利評価を実態に応じて見直す方針
●  現行の権利評価は昭和25年当時の金利水準・平均寿命を勘案
  政府税制調査会は、2010年度税制改正において、定期金に関する権利の評価方法を見直す方針だ。現行の定期金に関する権利の評価における割合・倍数は、1950(昭和25)年当時の金利水準・平均寿命などを勘案して定められており、その後の金利水準の低下や平均寿命の伸長、現行評価方法による算定額と年金受取額の現在価値とが大きく乖離していることなどを踏まえて見直しを行うとしている。
  現行の定期給付契約でその契約に関する定期金(年金)を受け取る権利を取得した場合の相続税の評価方法は、被保険者の死亡など給付事由が発生している場合、年金の受取期間が限定されている「有期定期金」は、(1)給付金額の総額×残存期間に応じた割合(20〜70%)、(2)1年間に受けるべき金額×15倍、のいずれか低い額、受取期間が限定されていない「無期定期金」は、1年間に受けるべき金額×15倍、一生涯受け取れる「終身定期金」は、1年間に受けるべき金額×受給権者の年齢に応じた倍数(1〜11倍)とされている。
●  定期金の権利評価と年金受取額の現在価値との乖離に着目した節税
  この「有期定期金」における割合や「終身定期金」における権利取得時における年齢は、昭和25年当時の金利水準(8.0%)と平均寿命(男58.0歳・女61.5歳)をベースに複利計算して相続税の評価額を算定している。
  この結果、現在の年金受取額の現在価値とは大きく乖離し、評価額との乖離に着目して定期金に関する権利の取得後に一時金受取への変更や解約ができる高額な一時払個人年金も販売されていることが問題視されていた。
  会計検査院の2006年度決算検査報告では、生保控除や死亡保険金等の適用状況を調べた検査事例の一つに有期定期金の権利評価を利用した節税手法が指摘されている。
  事例によると、評価額「3,578万5,200円」の死亡保険金に有期定期金の権利評価を適用していたが、これは、(1)死亡保険金「5,700万円」を支払期間10年の確定年金(年額596万4,200円)の方法で支払いを受けることで、(2)給付総額(596万4,200円×10年)に60%を掛ける計算で算出されたものだ。被相続人が死亡(2004年10月24日)する直前の2004年10月20日に加入した一時払変額個人年金保険が利用され、死亡保険金と同額が支払われていた。
●  改正案では解約返戻金相当額や一時金相当額等で評価
  改正案によると、給付事由が発生している場合、「有期定期金」は、(1)解約返戻金相当額、(2)(定期金に代えて一時金の給付を受けられる場合)一時金相当額、(3)1年間に受けるべき金額×約定利率の複利年金現価率(残存期間に応ずるもの)、のいずれか高い額とされる。複利年金現価率とは、約定利率をrとしたときに、n年間にわたって受け取れる年金総額の現在価値を求める際に用いられる率である。
  また、「無期定期金」は、上記と同じ(1)、(2)と(3)1年間に受けるべき金額÷約定利率、のいずれか高い額、「終身定期金」は、上記と同じ(1)、(2)と(3)1年間に受けるべき金額×約定利率の複利年金現価率(平均余命に応ずるもの)、のいずれか高い額とされる。
  なお、給付事由が発生していない定期金に関する権利の評価については、現行は「払込済保険料等(総額)×払込開始の時からの経過期間に応じた割合(90〜120%)」とされているが、これも上記に準じてその評価方法を見直す方針だ。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.12.14
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