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固定費を削減 事務所移転における会計と税務
●  事務所賃借料は固定費
  固定費とは、売上がゼロでも原則毎月発生する経費のことで、固定給与や地代家賃などほとんどの経費が該当する。一方、売上に比例して発生する費用のことを変動費といい、売上に対する仕入や外注費などが該当する。
  ここで損益分岐点売上高について説明する。損益分岐点売上高とは、儲けトントンとなる売上高のことで、「固定費÷(1−変動費率)」で求めることができる。変動費率は「変動費÷売上高」で求めることができ、おおまかに原価率で代用できる。
  例えば年間固定費2,000万円、原価率60%の会社の場合。2,000万円÷(1−60%)=5,000万円が損益分岐点売上高となる。つまり、儲けるためには固定費を減少させ、粗利益率を大きくすることが必要となる。
  一般的に事務所賃借料は固定費のなかで固定給与に次ぐ多額な経費であり、決算対策において事務所移転を検討される会社も多いだろう。そこで、今回は事務所移転における会計と税務の注意点についてお送りする。
●  旧事務所分の取扱い
  退室の際に「原状維持回復費用」を負担することになるが、この費用は修繕費として経理する。通常は契約当初に払い込んだ保証金と相殺され、残額があれば保証金の返金となる(保証金の返金は預け金が戻ってきただけなので、損益には影響しない)。また、「礼金」については通常5年間の均等償却をしているが、帳簿上に残額があれば全額費用処理できる。
  次に「新事務所に持っていかない固定資産」については廃棄処分することになるが、廃棄処分した固定資産については固定資産除却損として経理することができる。この場合、支出を伴わない費用となるため後の税務調査を考慮し、廃棄業者に依頼し廃棄証明書などを発行してもらうのがよいだろう。
●  新事務所分の取扱い
  新事務所に関する支払で一番大きいのが「保証金」である。保証金のうち将来返還される部分については費用にはならず資産計上し、将来返還されない部分については「礼金」として通常は5年間の均等償却を行う。ただし、20万円未満の礼金については一括の費用とすることができる。
  次に「引越し費用」だが、社会通念上妥当な金額であれば費用にすることができる。不動産屋に支払う「仲介手数料」についても全額費用にできる。
  また、新事務所における「内装工事や間仕切り工事」などは、修繕費ではなく資産計上することになる。ただし、資本金1億円以下の青色申告書を提出する中小企業者等については、30万円未満の固定資産については一括の費用とすることができる(年間300万円まで。新規法人については月数按分あり)。
●  忘れてはいけないのが届出
  事務所を移転した場合、変更登記をして終わりではない。忘れてはいけないのが、税務署、都道府県および市区町村への届出である。申告書や年末調整などの書類を受け取るためにも、忘れずに届出をしておいてほしい。
(今村京子 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2009.12.21
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