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改正農地相続等に係る納税猶予制度が12月15日から適用
●  20年間の農業継続による猶予税額の免除は廃止
  農地相続等に係る納税猶予制度は2009年度税制改正において大幅に見直されているが、「農地法等の一部を改正する法律」が12月15日に施行されたことに伴い、この納税猶予制度も同日以降の相続・贈与等から適用され、スタートすることになった。また、改正農地法では、相続等により農地法の許可を受けることなく農地を取得した者は、農業委員会にその旨を届け出なければならないという「農地の相続等の届出制度」が創設されているので併せて留意したい。
  2009年度税制改正においては、所有者が自ら耕作をしない農地が増加していることから、農地の永続的な確保と有効利用の徹底を主眼とする農業経営基盤強化促進法の改正を踏まえ、農地の有効利用を促進する貸付も納税猶予制度の適用対象とするなどの拡充を行うとともに、農地の保全に資するための見直しが行われている。
  農地の納税猶予制度では、農業相続人が農地を相続によって取得した場合、相続税の申告期限までに農業経営を開始し引き続き営むなど一定の要件をクリアすれば農地に係る相続税が猶予され、さらに、20年間の農業継続など一定要件を満たせば猶予税額が免除される。今回の改正では、20年間の農業継続による猶予税額の免除が廃止された一方で、他者に貸し付けた市街化区域農地についても納税猶予が適用できることになった。
●  やむを得ない事情による農地の貸付も納税猶予を継続
  具体的には、市街化区域外の農地に係る相続税の納税猶予について、
 (1)農業経営基盤強化促進法の規定に基づき貸し付けられた農地を適用対象とする
 (2)市街化区域外の農地について特例の適用を受ける者は、20年間の営農継続により猶予税額が免除される措置を廃止
 (3)猶予期間中に身体障害等のやむを得ない事情により営農継続が困難となった場合には、農地の貸付(営農の廃止)をしたときも、納税猶予の継続を認める
 (4)災害・疾病等のやむを得ない事情のため一時的に営農できない場合について、営農継続しているものとする取扱いを明確化
 (5)納税猶予適用者(20年間の営農継続により猶予税額が免除される者を除く)が、特例適用農地を譲渡等した場合に納付する猶予税額に係る利子税の税率を現行の年6.6%から年3.6%に引き下げる(年3.6%の税率は、特例により年2.2%となる:日本銀行の基準割引率0.5%の場合)
 (6)農用地区域内の特例適用農地を譲渡した場合については、総面積の20%を超える場合でも、納税猶予の取消し事由とはしない
  などの見直しが行われた。その他、市街化区域内の農地に係る納税猶予制度についても、上記の(3)から(5)までの措置を講ずるほか、納税猶予の取消し事由となる「耕作の放棄」について、その要件が見直されている。
●  「農地の相続等の届出制度」の創設
  一方、「農地の相続等の届出制度」は、農地を相続や遺産分割、法人の合併・分割等により取得した場合には、農業委員会にその旨の届出を義務付けた制度である。届出のあった農地についてその権利取得者が、農地の適正かつ効率的な利用が図られないおそれがある場合に、届出をした者に対して農業委員会が貸借のあっ旋などを行うために創設されたものだ。
  これまで相続等により農地法の許可を受けることなく取得された農地は、農業委員会による権利取得者の把握が困難であり、適正に利用されない場合に適切な指導がしにくい状況にあった。
  届出をしなかったり、虚偽の届出をした者は、10万円以下の過料となるので注意が必要だ。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.12.28
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