>  今週のトピックス >  No.1973
育児休業取得に関する不利益取扱いには、要注意
●  相談件数は、前年同期比65.6%増加
  厚生労働省は昨年12月24日、平成21年度上半期の各都道府県労働局雇用均等室における「妊娠・出産、産前産後休業及び育児休業等の取得等を理由とする解雇その他不利益取扱い事案に関する相談等の状況」について公表した。この発表によると2009年度上半期(4〜9月)において、育休取得を理由とした不利益取扱いを受けた労働者から各都道府県労働局雇用均等室に寄せられた相談件数は848件で、前年度同期(512件)と比べ65.6%増加した。
  育休取得を理由とする解雇や不利益取扱いについては、一昨年あたりからニュースなどでも話題になっているが、雇用情勢の悪化が大きな原因であることは明らかなだけに早急に対応策を考えていく必要があると思われる。
●  改正育児・介護休業法は、企業の不利益取扱い対策になっている
  政府は、平成21年3月に男女雇用機会均等法または育児・介護休業法に基づき、不利益取扱い事案への厳正な対応等について、各都道府県労働局長に対し通達し、あらためて適切な対応を徹底している。具体的には、
(1)労働者からの相談への丁寧な対応
(2)法違反の疑いのある事案についての迅速かつ厳正な対応
(3)法違反を未然に防止するための周知徹底
(4)相談窓口の周知徹底 
などであるが、企業側の不利益な取扱いをもっと強く抑制する明確なものがほしいところである。
  そのような中で、改正育児・介護休業法が成立し、平成21年9月30日 からは
(1)都道府県労働局長による紛争解決の援助制度の創設
(2)企業名の公表制度の創設
(3)過料の制度の創設
の3つの項目に関しては既に施行されている。また平成22年4月1日からは、調停委員による調停制度も創設されることになっている。
●  育児休業後の従業員の原職への職場復帰について
  育児休業後、職場復帰した際に従前の職場ではない部署に配置転換されて従業員側から提訴するという事件も起こっており、企業側も安易な意思決定は大きな損害を被ることを 忘れてはならない。
  原職への職場復帰について法律上ではどのように定めているのかという点を確認しておくとする。まず育児・介護休業法第10条では、「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定めており、もちろん育児休業後の職場復帰に関しても該当する項目である。
  原職への職場復帰については法律で義務化しているわけではないが、厚生労働省は、指針の中で、育児休業後においては、原則として原職または原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮すべきと定めている。
  また同じく育児・介護休業法第22条では、「事業主は、育児休業取得後に就業が円滑に行われるようにするため、雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理、育児休業している労働者の職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と定めている点は、見落としてはならない。
  これらを踏まえて職場復帰に際して配置転換をせざるを得ない場合には、本人へ早めに説明し、配置転換せざるを得ない理由についてはその決断に至った経緯や事情などをわかりやすく話すことが必要である。やはり法律や指針の趣旨に従って、従業員とのコミュニケーションを重視し、相手への配慮を忘れないよう丁寧に対応していれば労使トラブルに発展する確率は、かなり低くなるのではないだろうか。
参考:厚生労働省 妊娠・出産、産前産後休業及び育児休業等の取得等を理由とする解雇
その他不利益取扱い事案に関する相談等の状況について(平成21年度上半期)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003civ.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.01.18
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