>  今週のトピックス >  No.1980
平成21年分確定申告、証券税制の注意点
●  上場株式等の譲渡損失と配当の損益通算が可能に
  2月に入り、平成21年分確定申告の開始日が迫ってきた。今年の確定申告は例年に比べ、大きな改正項目が比較的少ないが、その中で目玉となるのは“証券税制”ではないだろうか。今回の確定申告から、上場株式等の譲渡損失と配当の損益通算が可能となる。その選択には注意を要する点もあるため、今回は今年から改正となる点を中心に、確定申告における証券税制の注意点をまとめてみたい。
●  申告不要制度と総合課税制度
  上場株式等の配当等については、従来から申告不要制度が設けられており、発行済株式総数の5%以上を保有していない限り、金額の多寡にかかわらず、確定申告不要を選択することができる。この方法を選択した場合、配当金額が所得に含まれないというメリットがある。税務上やその他の制度において、所得金額が計算の根拠や判定基準とされるものは多く、所得金額に含まれないということはそれだけでメリットがある。
  一方で、もちろん確定申告するという選択も可能である。この場合には総合課税となり、他の所得と合算された上で課税される。所得税は累進課税であるため、配当所得以外に多額の所得がある場合には、税率が高くなる。上場株式等の配当は、現在10%の源泉税(所得税7%・住民税3%)が課税されているが、総合課税の税率が高ければ不足分の税額を支払うことになる。ただし、総合課税の場合には配当控除という税額控除が適用できるため、有利か不利かは配当控除を考慮に入れた上で考える必要がある。一般的には、所得の多い方は総合課税が不利になるケースが多いと思われる。なお、総合課税の場合には申告不要制度と違い、配当所得が合計所得金額に含まれることとなるため、所得税や住民税以外にも影響する可能性がある。
●  損益通算するなら、申告分離課税
  上記の2つの制度に加えて、今回の確定申告から新たに申告分離課税を選択することができるようになった。申告分離課税を選択した場合にのみ、上場株式等の譲渡損失との損益通算が可能となるため、基本的には損益通算を前提に選択する制度ということになる(平成22年からは、源泉徴収ありの特定口座内で損益通算可能)。
  ただし、今回の確定申告で申告分離課税を選択した場合、損益通算後の所得があるときには、超過部分(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受けている場合には、その適用前の金額)が合計所得金額に含まれることになる。合計所得金額を少なくしたい場合には、配当ごとに申告不要と申告分離のどちらを選択するか、考える必要があるだろう。ちなみに申告分離を選択した場合でも、課せられる税率は申告不要制度と変わらない。
  なお、申告不要制度は1回に支払を受けるべき配当等の額ごとに選択することができ、総合課税と申告分離課税のどちらとも併用できるが、総合課税と申告分離課税の併用はできない。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2010.02.01
前のページにもどる
ページトップへ