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新規開業者のワークライフバランスは、約7割が「改善した」
●  新規開業者のワークライフバランスは、開業後に改善する傾向
  日本政策金融公庫総合研究所(以下、研究所)は、平成22年1月8日、「2009年度新規開業実態調査(特別調査)」の結果を発表した。日本政策金融公庫は、平成20年10月1日に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫および国際協力銀行( 国際金融等業務)が統合して誕生した。今回は国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)が2008年に融資した開業後5年以内の企業を調査対象としているが、新規開業者の開業前後のワークライフバランスの変化を探るというのは、ユニークな視点である。
  その調査結果によると、ワークライフバランスの変化を尋ねたところ、「大幅に改善した」が15.4%、「やや改善した」が50.8%と、開業前に比べて改善したと感じている人は66.2%となっていることがわかった。
  ワークライフバランスについては、主に勤務者の働き方に関するものであり、企業経営者を念頭においたものは少ないので、このような視点を変えた調査は大変貴重であり、今後開業しようとしている人にとっても大いに役立つといえるだろう。
●  開業前のワークライフバランスは、取れていたと感じる人は約5割
  同じ調査の中で、開業前のワークライフバランスをみると、「十分取れていた」が8.7%、「どちらかといえば取れていた」が39.5%で、「取れていた」と感じている人の割合は約5割であった。現在のワークライフバランスは、「十分取れている」が14.9%、「どちらかといえば取れている」が48.4%となり、開業前を上回る6割以上の人が「取れている」と回答している。
  このように新規開業前と後では、開業後のほうがワークライフバランスが取れるようになり、開業後に改善されていることが伺えるが、これらの要因はどこにあるのだろうか。
  普通に考えれば、独立して企業経営者となれば最初は事業を軌道に乗せるために、猛烈に働いているイメージがあるが、調査結果によると実際の労働時間は、「1時間以上増加」が27.9%、「1時間未満増加」が12.8%と、増加した人が約4割いる一方、「1時間以上減少」が23.9%、「1時間未満減少」が8.2%と、約3割の人は減少している。労働時間の変化とワークライフバランスの関係をみると、労働時間が減少するとワークライフバランスは改善したと捉える割合が高くなる傾向が読み取れる。
●  「仕事のストレスを感じている」のは、開業前と後を比べると約8割から約6割に減少
  仕事のストレスをみると、開業前は「かなり感じていた」が35.5%、「やや感じていた」が43.9%と、約8割の人がストレスを感じていたのに対し、現在、ストレスを感じている人は約6割と、開業前を下回っている。仕事のストレスとワークライフバランスの関係をみると、「ストレスをかなり感じている」人の37.0%、「やや感じている」では64.9%の人が開業前後でワークライフバランスの改善を感じているとしており、ストレスを感じているほど改善したと捉える割合は低い。
  新規開業者である企業経営者は、開業後ワークライフバランスが改善していると感じている割合が高いが、それは労働時間や仕事上のストレスだけが改善要因となっているわけではなく、仕事の充実感、自由時間の自己啓発活動の取り組みや地域活動への参加などの仕事以外の活動に取り組んでいることなども含めて、ワークライフバランスが改善されていると認識するのではないかと研究所では指摘している。
  新規開業者に限らず経営者の仕事スタイルは、雇用する従業員にも大きく影響するので、まずはワークライフバランスを重視した働き方を自らが率先して実行し、仕事効率を高め、付加価値の高い仕事をすることでさらなる雇用の創出を期待したいところである。

参考:日本政策金融公庫総合研究所「新規開業によるワークライフバランスの変化」
http://www.jfc.go.jp/common/pdf/shinkikaigyo_100108.pdf
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.02.01
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