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注意が必要なグループ法人税制の適用範囲
●  「100%グループ内の法人」の範囲の5類型
  2010年度税制改正で導入される予定のグループ法人税制は、大企業だけが関連するものと考えがちだが、グループ法人税制は、100%グループ内の法人には強制的に適用される制度であることから、中小企業や個人企業にも影響があるので留意したい。
  「100%グループ内の法人」の範囲には、次の5つの類型がある。
(1) 親会社であるA法人が100%出資してB法人を設立した場合には、A、B両法人は当然ながら100%グループ内法人となる。
  同様に、
(2) A法人が100%出資してB、Cの2社を設立した場合も、A、B、Cの3法人が100%グループ内法人となる。
  次に、
(3) A法人が100%出資してB法人を設立、その後A、B両法人が50%ずつ出資してC法人を設立したケースでは、A、B、Cの3法人が100%グループ内法人となる。
  さらに、
(4) 出資者が法人ではなく個人の場合はどうか。個人Aがそれぞれ100%出資してB法人、C法人を設立したときには、B法人とC法人が「100%グループ内法人」としてグループ法人税制の適用を受けることになる。
  最後に、
(5) 親族(法令4で規定する「同族関係者」)である個人Aと個人Bがそれぞれ出資してC法人、D法人を設立するといったケースで、例えば個人AがC法人に70%、D法人に60%出資し、個人BがC法人に30%、D法人に40%出資したときも、個人A、Bが法人C、法人Dに合計100%の出資をしていることから、C法人とD法人が「100%グループ内法人」となり、グループ法人税制が適用される。
●  直接的な資本関係がなくとも適用されるケース
  このように、グループ法人税制は、内国法人の100%子会社だけでなく、個人株主が支配する100%子会社にも適用される。そこで注意が必要なのは、個人株主の範囲がどこまで及ぶのかということである。
  支配関係の判定上の個人の範囲は、組織再編税制と同様に法人税法で規定する「同族関係者」と同様となるようだ。すなわち、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族が含まれる。例えば、父とその子2人(兄と弟)がそれぞれ100%株式を保有している法人があるとすれば、これらの3法人それぞれが直接的な資本関係がない場合でも、法人税法上は一つのグループとしてグループ法人税制が適用されることになる。
  したがって、これらの法人間で資産の譲渡を行った場合は、グループ法人税制における譲渡取引の損益繰延べなどの対象となるわけだ。これまでは、資産の譲渡先が6親等内の血族などが支配する法人かどうかはあまり考えずに行ってきたと思われるが、グループ法人税制が適用される予定の今年10月1日以後に何らかの資産を譲渡した場合には、その譲渡先が税務上の同族関係者に該当するかどうかを確認する必要がある。
●  グループ法人税制適用のメリット
  グループ法人税制の適用を受ければ、「100%グループ内の内国法人間で一定の資産の移転を行ったことにより生ずる譲渡損益を、その資産のそのグループ外への移転等のときに、その移転を行った法人において計上する」「グループ法人間の寄付金の支出法人の全額損金不算入、受領法人の全額益金不算入」「100%グループ内の内国法人からの受取配当につき益金不算入制度を適用する場合の負債利子控除不適用」の規定が適用されるなど、多くのメリットがある。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.02.22
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