>  今週のトピックス >  No.1998
昨年12月末の「国の借金」は過去最大の871兆円
●  普通国債が14兆円増の577兆円
  財務省がこのほど公表した2009年12月末時点での国債や借入金などを合計した「国の借金」は871兆5,104億円となり、過去最高を記録していた前回発表の2009年9月末時点(864兆5,226億円)を6兆9,878億円上回り、過去最大の額となった。地方が抱える長期債務残高は2009年度末で約198兆円程度と見込まれており、国と地方を合わせた借金は、大台の1,000兆円を突破する状況にある。
  9月末に比べ、国債は約11兆円増の705.3兆円で全体の約81%を占め、うち普通国債(建設国債+赤字国債)は、経済危機対策の財源確保のため増発した影響で約14兆円増の577.3兆円と過去最高となった。借入金も9月末に比べ約0.3兆円増の56.5兆円となった。ただし、政府短期証券は約4.3兆円減の109.7兆円、財政投融資特別会計国債は財投計画の縮小に伴い約3兆円減の123.7兆円とともに減少している。
●  国民1人あたり約684万円の借金
  この「国の借金」871兆5,104億円は、2010年度一般会計予算の歳出総額92兆2,992億円の約9.4倍、同年度税収見込み額37兆3,960億円の23.3倍である。年収500万円のサラリーマンが1億1,650万円の借金を抱えている勘定だ。また、わが国の今年1月1日時点での推計人口1億2,747万人(総務省統計、概算値)で割ると、国民1人あたり約684万円の借金となる。これは、赤ちゃんや子ども、ご老人など未就業者を含めての数字である。
  なお、公債残高(普通国債残高)は、2009年度末(第二次補正後予算)に600兆円程度、2010年度末(当初予算)には637兆円程度に膨らむと見込まれている。この2010年度末公債残高の約637兆円は、国民1人当たり約499万円、4人家族で約1,998万円となる。また、一般会計税収(2010年度予算額)約37兆円の約17年分に相当する。景気悪化に伴う税収減が大きく、財政再建の道はさらに遠のきつつあるようだ。
●  2010年度の国民負担率は39%で2年ぶりに上昇
  また、財務省は、2009年度の実績見込みでは38.8%だった国民負担率が、2010年度予算では0.2ポイント上昇の39.0%となるとの見通しを発表した。国民負担率とは、国民所得に対する税金や社会保険料(年金・医療費などの保険料)の負担割合。これで2年ぶりに前年を上回る。2010年度見通しの内訳は、国税が11.7%、地方税が9.8%、租税負担率が21.5%、社会保障負担率が17.5%。
  2009年度実績見込みに比べ、租税負担率は0.3ポイント減(国税は0.2ポイント増、地方税は0.5ポイント減)、社会保障負担率は0.5ポイント増加。高齢化の進展で社会保障負担が増え、同負担率はこの統計を開始した1970年以降で最高を記録している。
●  「潜在的国民負担率」は2番目に高水準の52.3%となる見通し
  真の負担率は、財政赤字という形で将来世代へ先送りしている負担額を加える必要がある。財務省によると、2010年度の国民所得(前年度に比べ3万2千円増の336万4千円)に対する財政赤字の割合は前年度から1.9ポイント減の13.3%となる見通し。この結果、2010年度の国民負担率に財政赤字を加えた「潜在的国民負担率」は、過去最高となった前年度からは1.7ポイント減の52.3%となる見通しだ。
  この「潜在的国民負担率」は、大型の景気対策で財政赤字が膨らみ、過去最高となった2009年度の54.0%に次いで2番目の高水準となる見通し。
  なお、租税負担率は、戦前の1934〜36年度は13%程度だったが、戦後は前半の混乱期を除いて20%前後で推移。しかし76年度以降、次第に上昇し始め、89・90年度の27.7%をピークに、その後はほぼ20%台前半で推移し、2010年度も法人税収の落込みなどで同水準となる見込み。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.03.01
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