>  今週のトピックス >  No.2001
介護保険の自己負担も医療費控除の対象に
  医療関係の支払額が多額になったときには、確定申告することで税金が安くなる(医療費控除)ことは、広く知られているが、介護関連でかかった費用の一部も医療費控除の対象になるということをご存じだろうか。
  医療費控除とは、1月から12月の1年間に支払った医療費(生計を同じくする家族分を含む)の合計額から、高額療養費や高額介護サービス費として払い戻された額や生命保険からの給付金などを差し引いた金額が、「10万円または所得の5%(少ない方)」を超えた場合、超えた額(上限200万円)を課税対象となる所得から差し引くことができる、という制度。課税される所得が減ることで、所得税だけでなく翌年の住民税も安くなるしくみだ。

<医療費控除額の計算方法>

  自営業者は通常の確定申告時に一緒に申告するが、サラリーマンのように勤務先で年末調整が済んでいる人でも、確定申告(還付申告)することで医療費控除を受けられる。確定申告期間は翌年の2月16日から3月15日だが、年末調整が済んでいて、医療費控除を受けるなど税金を取り戻すための確定申告なら、確定申告期間以外でも受け付けてもらえることがある。申告の際は領収書の提出が必要になるので、医療機関等で発行される領収書や市販のかぜ薬などの領収書は、捨てずに取っておこう。
  介護関連費用では、介護保険の自己負担(控除の対象にならないものもある)や、医師の使用証明書があるおむつ代などが対象となる。
●  施設サービスの自己負担額は控除の対象
  介護保険の3施設(特別養護老人ホーム=特養、老人保健施設=老健、療養病床)で受ける「施設サービス」については、介護費、食費、居住費の自己負担額について医療費控除が受けられる。特養については「支払った額の2分の1」、老健と療養病床は「全額」が対象となる。特別なサービスの費用やその他の日常生活費は対象外だ。

  国税庁HP:医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価
  http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1125.htm
●  居宅(在宅)サービスの自己負担額は内容による
  自宅や有料老人ホームなどの高齢者施設で受ける「居宅サービス」は、サービス内容により、(1)医療費控除の対象となるもの、(2)(1)のサービスと併用すると対象となるもの、(3)対象とならないもの、に分類される。
  (1)には「訪問看護」や「訪問や通所でのリハビリテーション」「療養管理指導」などが該当する。(2)となるのは「訪問介護」や「小規模多機能」など。そして(3)には、「福祉用具貸与」や、認知症の人が暮らすグループホームで受ける「認知症対応型共同生活介護」、介護付有料老人ホームなどで受ける「特定施設入居者生活介護」などがある。
  まとめると、医療行為に近い介護サービスはそのまま対象になり、生活支援の介護サービスは原則対象外で、医療行為に近いサービスと一緒に利用すると対象となる、ということだ。

  国税庁HP:医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価
  http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1127.htm

  介護サービスを受けたときの領収書には控除の対象となる金額が書いてあるが、よくわからない場合には税務署や確定申告の会場で確認してみるといいだろう。
  所得税の方は最低税率が5%なので、還付申告で戻る額は少額であることも多い。しかし、医療費控除は翌年の住民税(税率は一律10%)の計算の際にも反映される。課税世帯であれば、最低でも医療費控除額の15%(10万円なら、1万5,000円)の税金が安くなる。最初はやや面倒に感じるかもしれないが、手間を惜しまず手続きしてみる価値はあるだろう。
参考:2010年2月13日付 朝日新聞
(山田静江 CFP®)
2010.03.08
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