>  今週のトピックス >  No.2005
諸手当に対する満足度は、約5割
●  企業規模が小さいほど「支給されていない」割合が高い
  総合人材サービスのパソナグループで、人材紹介・再就職支援サービスを行う株式会社パソナキャリアは、来社した転職希望者を対象に、「諸手当に関する調査」を実施した。
  その調査結果によると、支給されている割合が高い手当は「住宅手当」(28.7%)、「職務手当」(21.3%)、「営業・外勤手当」(17.9%)の順となった。また、「支給されていない」と回答した方の割合は30.3%となった。「支給されていない」と回答した方の割合は、企業規模が小さくなるほど高く、業界別に見ると医療系で高くなっている。
  今回の調査は、転職希望者を対象としたものなので、企業側に質問しているものと比べると諸手当に対する満足度などの項目もあり、内容は充実している。各企業はこれらを参考にして諸手当についてあらためて考えてみるのもよいのではないだろうか。
●  大幅な手当の減額と退職は「関係ない」が約4割
  諸手当に対する満足度を尋ねたところ、「とても満足している」(6.9%)、「満足している」(42.9%)の合計49.8%の方が満足していると回答している。支給されている手当別に、満足と回答した方の割合を見ると、「家族手当」(65.5%)、「職務手当」(62.6%)、「住宅手当」(61.3%)の順となった。企業規模が大きくなるほど満足度は高くなる傾向が見られるのは、想定どおりといえるだろう。
  何も手当を支給されていない方で、現状に満足している方の割合は非常に低く、30.3%となっている。諸手当に満足していない方に理由を尋ねると、「住宅手当への不満」や「まわりと比べて少ない」「職務手当支給に関連する職級の評価基準があいまい」などの声があがっていた。また大幅な減額が退職のきっかけになる手当があるかどうかを尋ねたところ、「手当は関係ない」(38.1%)、「住宅手当」(12.4%)、「営業・外勤手当」(10.8%)の順となった。
●  各企業が基本給を低めに抑える理由
  上記調査の中で諸手当に満足していない方の理由のなかに、「基本給を低めに設定して手当で支給額を増やそうとしているように見える」という意見があったが、そのような企業が多いのは事実である。実際に意図的に基本給を抑えるような賃金制度を設計しているが、それには理由がある。
  1つ目の理由は、基本給を高くしてしまうと、退職金の支給額に反映されてしまうからである。それは企業にとって望ましくないので、できるだけ手当を増やすように設計するのはやむを得ないといえる。
  2つ目の理由は、賞与の支給についても基本給をベースに計算していることが多いので、基本給があまり高くなってしまうと企業側には望ましくないからである。
  3つ目の理由は、住宅手当や家族手当などは、原則として割増賃金の基礎となる賃金に含まれないので、このような手当を設けることで割増賃金の単価を下げることもできるからである。
  各企業は、基本給を低めに抑えながらも諸手当を併せて支給することで、総支給額を増やしてきたが、今後は経済環境の変化や子ども手当の支給開始などを受けて、賃金制度を見直しする必要があるのではないだろうか。
参考:パソナキャリア 「『諸手当』に関する調査」
http://314.pasonacareer.jp/knowhow/blog/2010/02/09-post_8.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.03.15
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