>  今週のトピックス >  No.2006
消費税の申告にあたって誤りやすいポイント
●  納税義務者の判定に注意!
  2009年分の消費税等の確定申告の期限は3月31日までだが、国税当局は、消費税等の確定申告において誤りやすいポイントを例示して注意を喚起している。
  まず、納税義務者は、課税期間(2009年)の基準期間(2007年)における課税売上高が1,000万円を超える事業者などだが、2007年分において免税事業者だった個人事業者の2009年分の納税義務の判定に当たって、売上高に105分の100を乗じて課税売上高を計算している例がある。
  例えば、2007年分の売上高が1,040万円で、105分の100を掛けると約990万円だから、1,000万円を超えず申告の必要がないといった具合だ。
  ところが、免税事業者の売上には消費税が課されていないので、基準期間である課税期間において免税事業者であった場合の課税資産の譲渡等の対価の額は、その期間中に国内において行った課税資産の譲渡等に伴って収受し、または収受すべき金銭等の金額の全額となることに留意する必要がある。
●  「消費税課税事業者選択届出書」の効力に注意!
  相続があった場合も注意が必要だ。それは、被相続人が提出した「消費税課税事業者選択届出書」の効力が、相続人にも及ぶと考えている事業者がいることだ。相続人にはその効果は及ばないので、新たに「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなければならない。
  そのほか、新規開業にあたって、「消費税課税事業者選択届出書」を提出した場合には、必ずその年から課税事業者となると考えている事業者も少なくない。
  国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間や、相続により課税事業者選択の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合におけるその相続があった日の属する課税期間に「消費税課税事業者選択届出書」を提出した場合は、届出の適用開始時期について、その課税期間か翌課税期間かを選択できることになっている。この点は、「消費税簡易課税制度選択届出書」も同様である。
●  事業用資産の譲渡がある場合に注意!
  事業用資産の譲渡がある場合にも誤りやすい事例が多い。建物等の譲渡収入のうち、事業の用に供していた建物や機械などの譲渡収入は消費税の課税売上に該当するので、消費税の課税事業者は、消費税の確定申告の際には、その譲渡収入を課税売上に含めて申告する必要がある。
  まず、貸付用建物の譲渡に係る消費税の申告漏れが挙げられる。例えば、不動産賃貸業を営む消費税課税事業者は、複数保有する貸付用マンションのうちの1室を売却し、譲渡損失が生じていたことから、その譲渡をした年分の消費税の確定申告に当たり、建物相当金額を課税売上に計上することは不要と判断し、消費税の申告を過少に行っていたというものだ。
  次に、負担付贈与による事業譲渡に伴う建物および設備等に係る消費税の申告漏れがある。個人病院を経営していた消費税課税事業者は、土地建物および医療関係機器を含む事業用設備等を負担付贈与で長男に譲渡した。この事業者は、その譲渡をした年分の事業所得およびその負担付贈与に係る譲渡所得等の確定申告は行っていたが、消費税の確定申告の際に、建物および事業用設備等相当額を課税売上に計上することを失念していた。
  また、法人成りに伴う建物および事業用設備に係る消費税の申告漏れも少なくないようだ。例えば、内装工事に係る個人事業を営んでいた消費税課税事業者は、事業を法人成りさせるために、これまで事業の用に供していた土地建物および事業用設備等を法人に対して現物出資し、その譲渡をした年分の事業所得およびその現物出資に係る譲渡所得等の確定申告は行っていたが、消費税の確定申告の際に、現物出資を行った建物および事業用設備等相当額を課税売上に計上することを失念していたというものだ。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.03.15
前のページにもどる
ページトップへ