>  今週のトピックス >  No.2008
手形に代わる新しい決済手段「電子債権」
●  「電子債権」とは?
  全国銀行協会が設立する「椛S銀電子債権ネットワーク(通称:でんさいネット)」が、平成24年5月に業務を開始する予定である。でんさいネットにおいて扱うのが、手形に代わる新たな決済手段である「電子債権」というものである。
  「電子債権」とは、手形債権や売掛債権等が抱える問題を克服し、事業者の資金調達の円滑化を図ることを目的として創設された金銭債権のことである。電子債権記録機関が作成する記録原簿に電子的な記録を行うことにより、債権の権利内容が定められる。
●  電子債権取引イメージ
  でんさいネットを利用した電子債権取引をイメージすると次にようになる。
  まず、取引銀行を通じて、でんさいネットの記録原簿に「発生記録」を行うことで電子債権が発生する。
  次に取引銀行を通じて、でんさいネットの記録原簿に「譲渡記録」を行うことで、電子債権を譲渡することができる。また、必要に応じて債権を分割して譲渡することもできるようだ。
  最後に、支払期日になると、自動的に支払企業の口座から資金を引き落とし、納入企業の口座へ払込みが行われる。でんさいネットが支払いを完了したことを「支払等記録」として記録してくれる。
●  支払企業のメリット
  支払企業が決済を行うに当たっては、手形の発行の場合は事務手続きが面倒で印紙税負担がある。しかし、電子債権を利用することにより、手形の発行、振込みの準備など支払に関する面倒な事務負担が軽減される。また、電子債権には印紙税が課税されない。さらに、手形、振込み、一括決済など複数の支払手段を電子債権に一本化することも可能となり、事務効率化を図ることができる。
●  納入企業のメリット
  納入企業が手形をもらう場合には、紛失や盗難のリスクがあり、そのため保管が面倒である。また手形の金額が大きい場合、資金の一部だけを現金化したいと思っていても全額を割り引く必要があり、割引をためらう企業が多いのも現実である。
  これが電子債権を利用できれば、ペーパーレスであるため保管する必要がなく、また必要な分だけ分割して譲渡や割引をすることも可能となる。さらには、支払期日になると取引銀行の口座に自動的に入金されるので、面倒な取立手続きが不要になり、受取当日から資金を利用することができる。
  電子債権は流通性の高い債権であるため、これまで資金繰りのために利用できなかった債権についても譲渡や割引などの対象となるようだ。
●  中小企業にも多大な影響
  「うちのような中小には関係のない話…」とはいかないであろう。支払企業が電子債権を発行する限りは、納入企業は「ノー」とはいえないのではなかろうか。電子申告よりも電子債権のほうが、中小企業の実務に影響が大きいため浸透するのも早いかもしれない。
(今村 京子 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2010.03.23
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