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‘08年度分の赤字法人割合は調査開始以来初の7割超に
〜「2008年度分税務統計から見た法人企業の実態調査」
●  世界同時不況の影響で営業収入金額、所得金額ともに大幅減少
  国税庁がこのほど公表した「2008年度分税務統計から見た法人企業の実態調査」結果によると、2008年度分の法人数は260万3,365社で、前年度より0.4%増加した。このうち、連結親法人は748社(前年度比9.2%増)、連結子法人は6,257社(同2.1%増)。同調査は、2008年4月1日から2009年3月31日までの間に終了した法人の各事業年度を調査対象としている。
  赤字法人は、連結子法人を除いた259万7,108社のうち185万6,575社で、赤字割合は前年から4.4ポイント増の71.5%となり、1951年分の調査開始以来初めて7割を超えた。748社ある連結法人も欠損法人が490社に上り赤字割合は65.5%に達した。
  2008年度分の営業収入金額は、前年度に比べ▲9.2%の1,419兆5,138億円と5年ぶりに減少した。黒字法人の営業収入金額も同▲27.0%の834兆5,336億円で5年ぶりの減少、所得金額も同▲36.2%の35兆2,209億円と大きく前年度分を下回り、下げ幅は過去最高を記録し、世界同時不況による業績悪化での企業収益の低迷が鮮明となった。
  営業収入に対する所得金額の割合(所得率)は、前年から0.6ポイント低下の4.2%となった。黒字法人の所得率ベスト3は「鉱業」(22.2%)、「不動産業」(9.2%)、「金融保険業」(8.9%)。
●  黒字法人の社内留保が▲42%の大幅減少
  黒字法人の益金処分総額は前年比▲33.8%の43兆6,529億円。内訳は、支払配当が同▲10.3%の10兆3,244億円(構成比23.7%)、法人税額が同▲34.0%の8兆9,140億円(同20.4%)、その他の社外流出が同▲34.1%の6兆4,793億円(同14.8%)で、これらを引いた社内留保が▲42.2%と大幅減少の17兆9,352億円で41.1%を占めた。
  なお、役員賞与は、会社法創設に伴い、2006年5月1日以後終了する事業年度から利益処分項目ではなくなっている。
●  交際費は▲4.6%の3兆2,261億円
  一方、2009年分で全国の企業が取引先の接待などで使った交際費は、前年度に比べ▲4.6%の3兆2,261億円となり、2年連続の減少となった。このうち、税法上損金に算入されなかった金額(損金不算入額)は同▲3.3%の1兆6,108億円とこちらも2年連続で減少。損金不算入割合も、前年度より0.6%増加したものの、2004年分以来4年ぶりの50%割れとなった前年度に引き続き50%を下回る、49.9%となった。
  営業収入10万円あたりの交際費等支出額は、全体では前年度より11円多い227円で、資本金1千万円未満が631円と高い一方、10億円以上は113円、5千万円以上1億円以下は160円と低い。また、業種別にみると、「建設業」が547円、「不動産業」が478円、「出版印刷業」が424円と高く、一方、「機械工業」が152円、「卸売業」および「小売業」が157円、「金融保険業」が161円と低くなっている。
  また、寄付金支出額は4,940億円と前年比3.2%伸びている。営業収入10万円当たりの支出額は35円。貸倒引当金の期末残高は7兆3,540億円。44万1,741社、17.0%が利用している。連結法人の63.9%、資本金10億円以上の会社の49.9%が利用。逆に、資本金1千万円未満の会社の利用割合は10.1%だった。当期発生分の減価償却の損金算入額は44兆1,912億円、損金算入割合は90.6%だった。
参照資料は↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon2008/pdf/gaiyou.pdf
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.03.29
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