>  今週のトピックス >  No.2017
シニアの住み替えを支援する「マイホーム借上げ制度」
  「シニア世代が駅近や都心のマンションを買っている」と、少し前に読んだ記事に書いてあった。子どもがいるときにはちょうど良かった家も、夫婦2人では広すぎて庭の手入れも大変。頻繁に旅行に行くなどアクティブに活動するため、あるいは病院通いや買い物の利便性を求めて、郊外の一戸建てからマンションに買い替える人もいるようだ。
  とはいえ、住み慣れたマイホームを手放して新たにマンションを購入するというのは、資金面や環境になじめなかった場合の不安が残る。買替えではなく、現在の自宅を貸して自分達は住みたい場所に賃借する方が、住み替えのハードルは低くなるだろう。
  こういったシニア世代のニーズに応える「マイホーム借上げ制度」というしくみがある。
●  「マイホーム借上げ制度」とは
  一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)※ が行っている、シニアのためのマイホーム借り上げ制度。JTIがマイホームを借り上げて、子育て世代などに貸し出すしくみだ。入居者の募集や契約手続き、家賃の徴収などはJTIが行う。賃料は相場より低めになるが、その代わり借り手が見つからず空き家になった場合でも、JTIから保証された最低家賃相当分を受け取れる安心感がある。
  制度が利用できるのは50歳以上の人で、対象物件はマイホーム。現在は住んでいない場合でも、マイホームとみなされる物件であれば利用可能。制度利用者(契約者)が亡くなるまでの終身借家契約だが、家に戻りたくなったら、その家を借りている人の契約更新のタイミングで終了できる。
  一方、借りる側は3年間の定期借家契約で、3年ごとの更新時には優先的に再契約できる。期限を区切った定期借家契約のため、相場より低い家賃で借りられること、敷金や礼金が必要ないことなどのメリットがある。

<マイホーム借り上げ制度の概要>
利用できる人  : 日本に居住する50歳以上の人、または海外に居住する50歳以上の日本人
住     宅 : 一戸建て、マンション
    ☆ 一定の耐震性が必要 → 補強工事で対応可
    ☆ 抵当権が設定されていない物件
    ☆ 住宅ローンが残っていても、提携ローンへの借り換えで利用可のことも
契     約 : 終身借家契約(途中で契約終了も可)
相     続 : 配偶者や子に相続可能。条件を満たせば制度の継続利用も可
    (ただし相続人が50歳未満であれば、原則として家賃保証は受けられない)
手 数 料 等 : 所定の管理手数料を支払う。住宅の性能を維持するためのメンテナンス費がかかる場合がある。
 ※ 移住・住みかえ支援機構(JTI)ホームページ:http://www.jt-i.jp/
  シニア(50歳以上)のマイホームを借上げ、賃料保証する非営利の法人として、住宅メーカーや不動産会社、金融機関を中心に平成18年4月に設立。利用者への支払いを保証するための内部準備金には、国から資金の提供(国の基金)も受けている。
  近年、高齢者のみの世帯は劇的に増えている。「平成21年版 高齢社会白書」(内閣府)によると、平成19年の全世帯数(4,802万世帯)のうち、高齢者一人または夫婦のみの世帯は1,006万世帯と20%を超えている。住み慣れたマイホームで暮らすことがベストの選択ではなくなったときにどうするか。この制度は、そういう場合の選択肢のひとつになりうるだろう。
  この制度は、住宅資産の活用という側面もある。シニア世代が持て余しているマイホームを、子育て世代に安く提供する橋渡しをする制度であるからだ。ファミリー向けの良質な賃貸住宅が少ないといわれている中、広めの住宅を安く借りられるのは、収入が思うように伸びない時代の子育て世代にとってありがたい制度といえるだろう。
山田静江 CFP®
2010.04.05
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