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定期金評価の見直しで生保業界に波紋!
〜経過措置期間中の受取人変更は新規契約扱い
●  3月末までの既契約は1年間の経過措置
  周知のように、2010年度税制改正で定期年金に関する評価方法が見直され、相続税の節税策がまたひとつ封じられた。これまで、例えば、定期金給付事由が発生している有期定期金については、その残存期間に受けるべき給付総額に20%〜70%の割合を乗じた金額で評価するとされていたが、今後は解約返戻金や一時金相当額で評価される。
  旧法では、例えば、1億円を25年かけて年400万円ずつ受け取る年金方式にすると、相続における評価額は4,000万円と大きく減額される。つまり、残りの6,000万円は相続税の課税対象とはならなかったのだから、その節税効果はとてつもなく大きいものだった。
  改正法の適用は、原則、2011年4月1日以後の相続等からだが、経過措置があり、2010年3月31日までに締結された定期金給付契約で2010年4月1日〜2011年3月31日の間に相続・贈与により取得するものについては、改正前の評価を適用するというものだ。今年4月以降の新規契約は新法の適用だが、今年3月末までに締結した既契約については、1年間の猶予を与えたのだ。
●  はしごを外された経過措置期間中での贈与
  この経過措置が、昨年末の税制改正大綱が公表された時点で明らかになっていたことから、今年3月31日までに一時払い個人年金保険の契約を締結し、来年3月31日までに受取人を変更するなどといった方法であれば、新法が適用されないという解釈が一部に広がったようで、改正前の評価減を狙う駆け込み的な契約も相当あったという。
  生保関係者によると、駆け込み的契約が可能だったのは1年以内にお金の支払いが始まる短期契約を扱っていた国内生保1社と外資系生保3社の計4社程度とみられ、契約総額は3,000億〜4,000億円程度にのぼるという。
  ところが、3月31日に公布された政令では、政令施行日前に締結された定期金給付契約のうち同日から2011年3月31日までに、定期金受取人等の変更など、契約内容に変更があったものは、軽微な変更を除き、その変更日に新たに締結された定期金給付契約とみなす、との規定が明らかになったのだ。
  駆け込み的契約のなかでは、契約者が父親で受取人が子どもといったケースは旧法適用となるが、契約者と受取人が本人で経過措置期間中に受取人を子どもに変更(贈与)しようとしていたケースなどは、変更日に新たな契約とみなされ、目論見が外れる。このため、生保各社やその代理店関係者などに、該当する契約者からのクレームが相次ぎそうな恐れがある。
  経過措置期間中に贈与して旧法適用で節税しようという目論見のはしごが外され、生保業界に波紋が広がっている。
●  明確化された新規契約とみなす「変更」
  なお、どの程度での変更であれば、新規に締結された契約とみなされることになるのかを明確にするため、相続税法施行規則の一部を改正する省令において、新たな契約とはみなされない「軽微な変更」について規定する附則を設けている。
  改正省令附則第2条では、(1)解約返戻金の金額、定期金に代えて一時金の給付を受けることができる契約に係る当該一時金の金額、給付を受けるべき期間または金額、予定利率など、契約に関する権利の価額の計算の基礎に影響を及ぼす変更や、(2)契約者または定期金受取人の変更、(3)当該契約に関する権利を取得する時期の変更、などは新たな契約とはみなされない「軽微な変更」には該当しないことを明記している。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.04.12
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