>  今週のトピックス >  No.2025
共働き夫婦の遺族年金
●  同じ年収でも遺族年金は夫死亡時に手厚い
  遺族年金は、一家の大黒柱に万一のことがあったときの遺族の生活保障を目的としているが、結婚・出産後にも働き続ける女性が少ない時代に作られた制度ということもあり、妻側に優しい制度となっている。
  女性の活用や育児休業制度が整備されたことから、妻の出産後も共働きを続ける夫婦も増えてきて、男性並みの年収を得ている女性も少なくない。しかし、夫婦どちらが死亡したかにより、もらえる年金は全く違う。
  例えば、年収がそれぞれ850万円未満で18歳までの子どもが1人いる夫婦の場合を見てみよう。夫が死亡したときには、妻は自分の年金の受給が始まるまで切れ目なく遺族年金をもらえるが、妻が亡くなっても夫が55歳未満なら、夫は遺族年金を全くもらえない。
  遺族厚生年金だけは、子が高校を卒業する時期まで支給されるが、支給対象は子であって夫ではない。
  生命保険は夫や父親が入るものという印象が強いが、妻の収入が家計に大きく貢献している場合には、むしろ妻の死亡保障が重要になる。
●  サラリーマンの遺族年金は2種類
  サラリーマンは厚生年金に加入すると同時に国民年金にも加入するので、条件を満たせば2種類の遺族年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金)が支給される。
<遺族基礎年金(国民年金加入者)>
  国民年金に加入している父親が亡くなったときに、子がいる妻(あるいは子)に支給される(「子」とは18歳到達年度の3月31日を経過していない子、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害者)。
  支給対象となるのは、「妻」と「子」だけなので、無収入でも夫には遺族基礎年金は支給されない。
  [年金額:792,100円+子の加算]
  [子の加算] 第1・2子 各227,900円  第3子以降 各 75,900円
  つまり子が1人いる妻なら102万円、2人なら124万7,900円の遺族年金を、子が18歳になった後の3月分まで受取ることができる。
<遺族厚生年金(厚生年金加入者)>
  厚生年金に加入している人(被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡した場合も含む)が亡くなったときに、遺族に支給される。年金額は、加入していた期間とその間の平均収入で決まる。
  遺族厚生年金をもらえるのは、(1)遺族基礎年金の支給対象となる妻と子、(2)子のない妻、(3)妻死亡時に55歳以上の夫、父母、祖父母(60歳から支給)、(4)一定の条件を満たす孫((1)〜(4)は順位)で、遺族基礎年金より支給対象となる遺族の幅は広い。とはいえ妻は年収要件を満たせば何歳でもすぐに受給できるが、夫は妻死亡時に55歳以上で、かつ受取れるのは60歳からである。
  さらに遺族厚生年金をもらえる妻は、夫が亡くなったときあるいは遺族基礎年金がもらえなくなったときに40歳以上であれば、65歳になるまでの期間594,200円の上乗せ(中高齢寡婦加算)がある。
<遺族年金が支給されない場合>
  ただし遺族年金は、年金制度に未加入の場合や保険料未納期間がある場合には支給されないので注意が必要だ。具体的には、(1)20歳から死亡日の前々月までの2/3以上の期間の保険料を納付していること(免除期間含む)、(2)死亡日の属する月の前々月までの1年間未納がないこと、のどちらかに該当することが条件だ。
  また、死亡した人と生計維持関係にあることも支給の条件となる。単身赴任などで別に暮らしていても通常は問題ないが、受取る人の年収が恒常的に850万円以上なら生計維持関係にないとみなされ、遺族年金はもらえないということも覚えておきたい。
  注)年金額は平成22年度価格
(山田静江 CFP®)
2010.04.19
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