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NPO法人への寄附に税額控除を導入する方針
●  中低所得者層の恩恵を拡大して草の根寄附を促進
  政府税制調査会の市民公益税制PT(プロジェクトチーム)は4月8日の会合で、認定NPO法人に対する寄附への税額控除制度の導入や、認定基準の見直しなどを中心としたNPO法人に対する支援税制の改革の方向性を明らかにした。
  現行の寄附優遇税制の所得控除は、高所得者に有利な制度となっており、中低所得者層に対する寄附促進効果を高めるため、新たに税額控除を導入し、所得控除との選択性とする方針だ。
  現行制度は、個人が認定NPO法人に対して寄附を行った場合、「寄附金額(所得の40%が限度)− 2千円」を所得から控除できる所得控除だが、控除の優遇度合いは所得に応じて決まる所得税率に左右され、所得税率が高い高所得者ほど控除の恩恵は大きい。そこで、所得にかかわらず寄附金額の一定割合を所得税から差し引く税額控除も選択できるようにして、中低所得者層の恩恵を拡大し、草の根寄附を促進する考えだ。
●  PSTを見直し、事業収入の多いNPO法人も認定可能に
  一方で、税制上優遇が受けられる認定NPO法人を増やすため、同法人の認定基準を見直す。現行の寄附優遇等を受けるための認定要件の一つに、経常収入に占める寄附金等の割合が一定以上であること(パブリック・サポート・テスト:PST)がある。PSTの算式は、「寄附金+国の補助金等+会費」が「寄附金+国の補助金等+会費+事業収入」に占める割合が5分の1以上というもの。
  つまり、現在のこの基準は、福祉事業を手がけているNPO法人など事業収入の多いNPO法人にはクリアしにくいため、事業収入の多いNPO法人でも、幅広く市民の支持を得ているのであれば認定を受けられるように、PSTに一定金額以上の寄附者の絶対数で判定する方式を導入する。
  さらに、設立から年数が浅いNPO法人は多額の寄附を集めた実績がないなど、認定要件を充足しづらいことから、PSTを満たしていなくても、他の認定要件を満たしていれば、寄附優遇を認める制度、いわゆる「仮認定」制度を導入する。例えば、認定に必要な寄附金の水準を数年後に達成することで「仮認定」する。その際、制度の悪用を防止するため、「仮認定」を受けながら「本認定」を受けない場合の措置を設ける。
●  認定機関を地方団体等に移すことも検討
  そのほか、「新しい公共」の担い手として期待される認定NPO法人の認定機関のあり方を検討する。
  現行の認定NPO法人の認定事務は国税庁が行っており、他方、公益社団・財団法人の公益認定は内閣府または都道府県の第三者機関(公益法人などの制度や実情に精通した学識経験者等が委員)が実施している。
  しかし、実際に認定を受けようとするNPO法人が信頼できるかどうかを適切に認定できるのは、NPO法人と身近に接し、その活動内容をより的確に把握できる地方団体等であるなどの意見を踏まえ、認定NPO法人の認定を、NPO法人の認証を行っている地方団体等が行う仕組みについて検討する。
  また、認定NPO法人には、収益事業に属する財産を非収益事業のために支出した場合、所得金額の20%を限度に損金算入が認められる「みなし寄附金制度」があるが、この上限の引上げも検討される。
参照資料:市民公益税制PT 中間報告書↓
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/pdf/22zen1kai2.pdf
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.04.19
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