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「腸間膜リンパ節炎」告知における留意点
  新しい医療診断技術が開発されると、頻度が少なかった病名が頻繁に告知として現れるようになります。今回は、「急性虫垂炎(急性盲腸炎)」と「腸間膜リンパ節炎」を例に出してお話をします。
●  「腸間膜リンパ節炎」とは
  「急性虫垂炎」、いわゆる「急性盲腸炎」は皆さんもご存じのとおり、手術が優先されます(私も小学生のときに病院に担ぎ込まれて手術を受けました…)。一方、あまり聞きなれない「腸間膜リンパ節炎」という病気があるのですが、これが急性虫垂炎と同様の症状なのです。虫垂炎は虫垂が、腸間膜リンパ節炎はちょうど虫垂があるあたり(回盲部付近)の腸管リンパ節が炎症を起こすものです。腸間膜リンパ節炎は腸管の感染症や上気道の感染症(風邪等)などで起こり、発熱、腹痛、嘔吐、下痢など、急性虫垂炎と同じような症状が現れます。また血液検査では炎症反応も観察されるため、腸間膜リンパ節炎と急性虫垂炎との鑑別は困難であるといえます。
  実際、急性虫垂炎と判断されて虫垂を切除するために手術をしてみたら、なんと虫垂は正常で、実は(その近くの)腸間膜に発赤腫脹したリンパ節を認める→腸間膜リンパ節炎と判明するということがあるのです。
  しかし最近は、高周波ハーモニック装置(超音波検査)の登場で、正常な虫垂とその周囲の組織が明瞭に描出できるようになりました。この検査が開発されたおかげで、手術が必要な急性虫垂炎と、手術ではなく保存治療が第一選択される腸間膜リンパ節炎、憩室炎、小腸炎などの急性腹症との鑑別が容易になったのです。
  従来、腸間膜リンパ節炎の頻度は虫垂炎手術例の10%といわれてきましたが、本装置の導入で、今後症例数は増加するのではないかと思われます。ちなみに腸間膜リンパ節炎の確定診断とされるリンパ節のサイズと数は「5mm以上3個以上」とされています。
●  ご契約をいただく際には
  腸間膜リンパ節炎は一見仰々しい疾患名ですが、手術なしの保存的治療でよくなります。したがって、完治後は標準体引受も可能な疾患でしょう。もちろん、急性虫垂炎は手術後、完治すれば引受査定に関しては問題ありません。ただし、入院期間が長期にわたる場合、他の疾病も疑われるため、2週間以上の入院がある場合はその理由も記載していただくとよいでしょう。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2010.04.26
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