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消費税改正、免税事業者のタックスプランニングに影響あり
●  自販機節税スキーム、4月以降は不可
  4月から平成22年度税制改正が施行されているが、その中の1つに消費税の課税方法選択についての改正がある。個人事業主や中小企業にも影響がある改正のため、今回はこの改正内容についてお届けしたい。
  もともと、この改正は「アパート消費税還付スキーム」に端を発している。いわゆる「自販機節税」といわれるものである。居住用家賃は消費税法上の非課税売上であるため、他に課税売上がない事業者の場合、アパートの建築費用に係る消費税については還付を受けることができない。そこで自販機を設置し、一時的に課税売上が100%の状態を意図的に作り出して、建築に係る消費税の還付を受けるというのがこのスキームのやり方である。
  通常このような場合には、以後の事業年度において消費税の取り戻しが図られる規定が存在するのだが、このスキームの場合には3年目に免税事業者または簡易課税を選択することによって、この調整規定の対象からも外れてしまう。
  この方法を利用した消費税還付が全国で多発し、事態を重く見た会計検査院が国税庁に対して改善を求め、それを受けた政府税制調査会が今年度の税制改正において改正を行ったという経緯がある。
●  一定の場合に、原則課税の3年縛り
  では、具体的にはどのように改正されたのだろうか。おおまかに言うと、次のようになる。課税事業者を選択した課税期間(資本金1,000万円以上の法人の設立事業年度を含む)から原則2期以内に1組100万円以上の固定資産(調整対象固定資産)を購入した場合、その購入事業年度から原則3年間は原則課税による申告が強制されることになる。この期間中は、免税事業者に戻ることも簡易課税を選択することもできない。ただし、従来から既に簡易課税を継続している場合や設立事業年度から簡易課税を選択し、継続するような場合は対象外となる。
  この改正は、平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出し、同日以後開始する課税期間から課税事業者となる事業者や同日以後資本金1,000万円以上の法人を設立した事業者が適用になる。
●  免税事業者の消費税判定に影響あり
  改正の経緯が上記のような節税封じであるため、一般の個人事業主や中小企業には影響がないようなイメージがあるかもしれないが、この改正はアパート建築があるかないかに関わらず適用となる。注意が必要なのは、免税事業者と資本金1,000万円以上の法人設立である。免税事業者の場合、課税事業者を選択すれば還付を受けられる可能性がある。還付を受ける場合には事前に届出書の提出が必要であり、課税事業者の選択は2年間強制となるため、これまでは原則2年単位で有利判定を行っていた。今後は、投資予定がある場合、その投資時期と金額が非常に重要となる。場合によっては、原則課税が3年間、4年間 継続する可能性が出てくるためである。
  届出書を出した後の調整対象固定資産の購入にも注意が必要となる。例えば、免税事業者が課税事業者を選択してから2期目に簡易課税の選択届出書を提出し、3期目から簡易課税を選択したとする。この場合に、その届出書提出後の2期中に調整対象固定資産を購入すると、以前に提出した簡易課税選択届出書の効果はなくなり、3期目、4期目は原則課税が強制されることになる。今後の消費税シミュレーションはより緻密に行うことが求められる。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2010.04.26
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