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「定年まで勤めたい」が5割 安定志向強まる
●  年功主義の割合が増加し、競争を嫌う世代の特徴鮮明に
  社団法人日本能率協会では毎年、新入社員を対象に、「会社や社会に対し、どのような意識や価値観を持っているか」の調査を行っている。今回2010年度の調査結果の発表によると、「定年まで勤めたい」との回答が50.0%に上り、転職・独立志向の有無について質問を始めた1999年の調査以降、最高となった。景気低迷とともに安定志向の新入社員が増加していることが明らかになったといえるだろう。
  また、「実力・成果主義」と「年功主義」の会社のどちらで働きたいかに関しては、ほぼ半々(実力・成果主義(49.1%):年功主義(50.4%))であるが、06 年度と比べると「年功主義」が15.8 ポイント増加しており、「年功主義」志向が強まっている。このように安定志向の人が増加するとともに将来への不安を感じる人も多く、「10年後の日本はより良い社会になっているか」という質問に対しても「なっていないと思う」が46%と約半数を占める結果となった。
●  女性の2人に1人は、「管理職になりたい」
  同調査によると、「あなたは将来、管理職になりたいと思うか?」という質問に対して、全体のおよそ3 人に2 人(63.6%)が「将来管理職になりたい」と回答している。大卒・大学院卒の女性の回答では50.5%が「将来管理職になりたい」と答えており、女性のキャリア志向がうかがえる。
  女性の管理職は、割合はまだまだ少ないが近年増加傾向にあるようだ。厚生労働省がまとめた「平成18年度女性雇用管理基本調査」の結果からも、直近3年間で大企業を中心に女性管理職の割合が上昇していることが明らかになっている。調査実施から年月が経過している現在においては、女性管理職の割合は、さらに増加していると推測することができる。
  平成18年の統計結果から、女性の管理職への登用状況をみると、係長相当職以上の女性管理職(役員を含む)がいる企業割合は66.6%で、これを役職別に女性管理職を有する企業割合をみると、部長相当職8.8%、課長相当職21.1%、係長相当職32.0%となっている。
●  新入社員の8割は、協調性に自信あり
  同調査において新入社員の特徴がよくわかる質問として、「経済産業省の提唱する社会人基礎力の12要素としてどの程度得意な能力があるか」を聞いたところ、「規律性(社会のルールや人との約束を守る力)」(85.7%)、「柔軟性(意見の違いや立場の違いを理解する力)」(81.2%)、「情況把握力(周囲の人々や物事との関係性の理解力)」(80.8%)、「傾聴力(相手の意見を丁寧に聴く力)」(79.8%)について、いずれもほぼ8割が得意と回答しており、周囲との協調性に自信を持っている。
  一方、「発信力(自分の意見を分かりやすく伝える力)」(42.5%)、「働きかけ力(他人に働きかけ巻き込む力)」(53.5%)を得意とする回答は半数程度にとどまり、他者との関わりにおいて受け身の姿勢がうかがえる。
  これまでの質問に対する回答をまとめてみると、「安定志向で受身の姿勢だけれど、協調性には自信がある」というのが、今年の新入社員の特徴といえる。人材育成の担当者および会社の上司は、これらの今年の新入社員の特徴をよく理解したうえで、接していくことが求められているといえるだろう。
参考:社団法人日本能率協会「2010年度 新入社員「会社や社会に対する意識調査」結果
http://www.jma.or.jp/news/release_detail.html?id=91
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.04.26
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