>  今週のトピックス >  No.2032
脱税犯に対する罰則強化
●  納税者の権利と義務
  納税者は、法律上の権利を有している。例えば、憲法第84条において「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と定められている。平たく申し上げるならば、法律の定めのない税額については、支払を拒否することができるという権利(租税法律主義)のことである。
  一方、憲法第30条において「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」と納税義務が課されている。
  つまり、権利の裏返しとして、納税者には適正に税制上の義務を履行することが求められる。義務を適正に履行しない納税者に対しては、厳正かつ的確に対処する必要がある。
  そこで、課税の適正化を図り、税制への信頼を確保するために、平成22年税制改正において、他の経済犯とのバランスなどを考えながら、租税に関する罰則規定の見直しが行われた。
●  租税に関する罰則の見直し
  平成22年6月1日以後の違反行為について、次のように強化される。
1.脱税犯(不正手段により税を免れる行為)
(改正前) 「5年以下の懲役もしくは500万円以下(情状により脱税額以下)の罰金または併科」(直接税・消費税の場合)等
(改正後) 「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下(情状により脱税額以下)の罰金または併科」(直接税・消費税の場合)に引き上げる等、法定刑の引き上げ
  消費税等を除く間接税等の罰金刑につては100万円(現行50万円)に、源泉所得税不納付犯の罰金刑については200万円(現行100万円)に引き上げる
2.秩序犯(申告書の不提出、検査忌避等の行為)
(改正前) 「1年以下の懲役または20万円以下の罰金」等(直接税・消費税の場合)
  消費税を除く間接税等については、基本的に罰金刑のみ
(改正後) 消費税を除く間接税等についても、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に揃える等、法定刑の引き上げ
3.税務職員の守秘義務違反の罪
(改正前) 「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」(直接税・消費税)
(改正後) 「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」に罰金刑を引き上げ
  守秘義務違反の統一的規模を国税通則法に設けるとともに、処罰対象範囲を拡大
●  適正申告が一番の節税
  脱税犯というように脱税は犯罪であり、新聞等で報道される可能性も高い。「あの会社、脱税で捕まった…」ということになれば、それまで築いてきた社会的信用が崩れてしまうだけでなく、(本税+ペナルティ)を支払うことになり、資金ショートを起してしまうこともありうる。
  結果として、適正に申告し納税することが一番の節税といえるかもしれない。
(今村 京子 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2010.05.10
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