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「平成20事務年度 法人税等の調査事績の概要」にみる法人税納税状況
  3月末で会計年度を終了し、決算および確定申告に向けて対応中の法人が多いと思われる。最近の景気低迷の影響もあって税収が伸び悩む中、国税庁としても税収確保と公正な申告・納税の実現に向けた取組みが行われており、その調査結果として毎年、調査事績が発表されている。平成20事務年度についての報告はすでに昨年11月に発表されているが、多くの法人が決算時期を迎えているタイミングでもあり、その内容について振り返ってみたい。
●  調査件数および非違件数については、前年度からほぼ横ばい傾向
  大口・悪質な不正計算が想定される法人など調査必要度が高い法人として14万6,000件の実地調査 が行われ、そのうちの約73%に相当する10万6,000件に非違が認められている。傾向としては、前年度(平成19事務年度実績:調査件数14万7,000件、非違件数10万9,000件)からほぼ横ばいの実績である。非違件数のうち不正計算があったのは3万1,000件(同3万2,000件)となっている。
  また、その申告漏れの所得金額は1兆3,255億円(同1兆6,259億円)、そのうち不正所得金額は4,195億円(同4,268億円)であり、その結果として3,272億円(同3,916億円)の追徴が発生している。
●  稼働無申告法人や仮装赤字法人に対しては重点的に調査・指導を実施
  事業を行っているにもかかわらず申告のない法人(稼働無申告法人)や、本来、黒字でありながら赤字を装って申告して納税を免れようとする法人(仮装赤字法人)に対しては、納税の公平性を著しく損なうものとして、重点的な調査が毎年実施されている。
  稼働無申告法人に対しては3,094件について実地調査したところ、半数以上が本来黒字申告すべき法人であったことが判明。申告すべき所得金額は約212億円にもなり、59億円の法人税追徴が行われている。また、無所得申告法人に対しては4万9,325件について調査、その結果6,956件が黒字申告に転換となっている。調査対象のうち不正計算があったのは12,064件(不正発見率24.5%)であり、不正所得は約1,580億円にものぼっている。
●  公益法人にも求められる申告・納税の適正性
  公益法人が物品販売や不動産貸付など法で定められた収益事業を行う場合、それによって得られた所得に対して法人税が課税される。公益法人に対しては税法上の優遇措置が設けられており、社会的関心も高いことなどから、国税庁では事業の実態の把握や調査の充実に取り組んでいる。
  申告義務のある公益法人の申告処理件数32,992件のうち、実地調査の対象となったのは1,308件。そのうち非違が認められ更正・決定となった件数は863件であり、調査対象の約3分の2を占めた。不正件数は69件、発見率割合5.3%と、法人全体の実績と比較すればかなり良好な結果となっているが、一方で、調査1件あたりの申告漏れ金額が1億2,493万円(法人全体では9,109万円)、不正申告1件あたりの不正脱漏所得金額は4億9,073万円(同1億3,382万円)と、法人全体の実績からは極めて劣った結果となり、さらなる適正化への取組みも求められている。
●  税収が伸び悩む中、ますます求められる申告・納税への適正な対応
  昨今の景気低迷への対策のために、法人に対する税制面での優遇策が検討・実施されている。財務状 況の改善に向け各法人も懸命の努力を続けているが、税務当局としても税負担の公平性や健全な課税制度の運営を目指して、法人に対する調査の精度向上に取り組んでおり、各法人に対してさらなる適正な決算処理および申告・納税が求められているといえそうだ。公認会計士や税理士などの税務の専門家ともさらに十分に連携しながらの対応もますます必要となると思われる。
参考資料:国税庁「平成20事務年度 法人税等の調査事績の概要」
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2009/hojin_chosa/index.htm
2010.05.10
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