>  今週のトピックス >  No.2038
今年10月からのたばこ税値上げで進む禁煙?!
●  2009年度紙巻たばこは4.9%減、値上げ前に消費減少
  日本たばこ協会がこのほど発表した2009年度の国内の紙巻たばこ販売実績によると、2008年度に2,458億本だったたばこの消費量は、2009年度に2,339億本と対前年比4.9%減少した。健康志向の高まりや公共空間での禁煙施策が浸透してきたことなどが主な理由とされる。だが、今後、それ以上にたばこ離れを招きそうなのは、2010年度の税制改正で決まり、10月1日から実施されるたばこ税の値上げだ。
  国税のたばこ税は、旧3級品以外の製造たばこは1箱あたり現在の71.0円から122.24円になり、たばこ特別税も加えれば174.88円から244.88円へと40%の大幅な税率アップ。地方のたばこ税についても、道府県税が21.48円から30.08円に、市町村たばこ税は65.96円から92.36円になる。この結果、1本あたり3.5円(国・地方それぞれ1.75円)が引き上げられ、販売価格にして1箱あたり100円程度値上がりする予定だ。
●  税率引上げ分は申告納税する手持品課税を実施
  一方、地方たばこ税は小売業者の事業所所在の市町村に納税されるので、自治体間で税収の帰属をめぐる問題も起こる。昨年11月には、大阪府泉佐野市にある1台のたばこ自販機が1年で14億円余の税収を同市にもたらしたことから問題になった。
  報道によれば、この自販機を所有する豊中市の小売業者は、佐野市が市内のたばこ販売に対する奨励金を支払う条例を創設したことから、商品発注の大半をこの自販機に集中させたという。この結果、2007年度に7億6,000万円程度だった佐野市のたばこ税収は、2008年度に14億6,000万円とほぼ倍増している。
  こうしたことから、政府税制調査会は、店舗・営業所・倉庫・居宅等で合計3万本以上のたばこを販売のために所持している場合には、税率の引上げ分に相当するたばこ税について申告納税する手持品課税を実施すると今回の答申に明記している。
●  高まる「禁煙治療」への関心
  こうした動きとは別に、近年の喫煙環境が厳しくなっていることに加え、財布を直撃するこの増税を受け、いま愛煙家の間で「禁煙治療」への関心が高まっている。たばこ税の増税を機に「禁煙」を決意する人が増えているという。
  禁煙治療とは、医師の指導のもとでニコチン依存症を改善し、禁煙を実行していくもの。ニコチン依存症を放置すれば重大な合併症を引き起こすため、一定の禁煙治療については2006年4月から保険適用が認められている。
  保険適用の対象となるのは、
(1)スクリーニングテストでニコチン依存症と診断された
(2)喫煙本数×喫煙年数が200以上
(3)禁煙治療についての説明を受け同意していること
のすべてを満たす人。
  また、保険適用での禁煙治療を行う医療機関側についても、
(ア)禁煙治療を行っている旨を医療機関内にわかりやすく掲示していること
(イ)禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること
(ウ)禁煙治療に係る専任の看護職員が1名以上勤務していること
(エ)治療のために呼気中一酸化炭素濃度測定器を設置していること
(オ)医療機関の施設内が禁煙であること
といった基準をすべて満たす必要がある。
●  医療費控除の対象となる禁煙治療費
  禁煙治療にかかる費用は保険適用で1万2,000〜1万7,000円程度(3割負担として)。「医師による治療」であるため、自己負担分は医療費控除の対象だが、ニコチンガムなどの禁煙補助薬を医者からの処方箋がなく、薬局などで購入した場合には対象とならない。
  なお、前述の(1)〜(3)の要件を満たさない場合は自由診療となるが、その場合でも「医師による治療」には変わりないため、かかった医療費はやはり医療費控除の対象となる。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.05.17
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