>  今週のトピックス >  No.2044
オーナー課税制度廃止の影響
●  4月1日以後終了事業年度よりオーナー課税廃止
  5月末で3月決算の確定申告は終了し、6月からは4月決算法人の申告が始まるため、いよいよ本格的に今年度の改正事項が含まれてくるようになる。その1つが、いわゆる「オーナー課税制度の廃止」である。
  正式名称は「特殊支配同族会社の業務主宰役員給与の損金不算入」といい、今年度税制改正において、平成22年4月1日以後終了事業年度からの廃止が決定した。そのため、4月決算法人、つまり6月申告法人からはこの増税計算は不要となる。ケースによっては、この規定の適用判断や計算が複雑な場合もあり、申告誤りも多かったようなので、該当されていた会社にとっては朗報であろう。
  特殊支配同族会社とは、業務主宰役員(主には社長)グループがその同族会社発行済株式等の90%以上を所有し、かつ業務主宰役員および常務に従事する業務主宰役員関連者の総数が常務に従事する役員の総数の半数を超えるものをいう。
  特殊支配同族会社に該当した場合、基準所得金額が1,600万円以下の場合や、基準所得金額が1,600万円超3,000万円以下でかつ基準所得金額に占める業務主宰役員給与の割合が50%以下である場合を除き、業務主宰役員の給与所得控除額相当額が損金不算入となっていた。
●  制度廃止を現状見直しのきっかけに
  この制度の対象となっていた会社の中には、上記要件から外れるため、もしくは増税額を少なくするために対策を打っていた場合もあるだろう。
  一般的には、この制度の回避策は下記の4つがあった。
(1)  発行済株式総数の10%超を業務主宰役員グループ以外の第三者に所有してもらう
(2) 常務従事役員の50%以上を業務主宰役員グループ以外の第三者にする
(3) 業務主宰役員報酬を減らし、その他の親族役員等の報酬を増やす
(4) 除外要件に該当するように、業務主宰役員報酬を一定額に抑える
  制度廃止になれば、当然これらの対策は不要になる。特にこの増税規定回避のためだけに対策を打っていたような場合には、改正前の状態に戻すことも視野に入れて検討する必要があるだろう。
  役員報酬の設定については、通常、定期同額給与であるため、原則事業年度開始後3カ月以内にしか変更はできないが、次回改定時にはもう一度ゼロベースで役員間の報酬按分を考えてみてもいいだろう。
  株主と役員については、会社経営の根幹に関わってくる問題でもあるため、特に慎重に対応したい。この改正が、現状を見直し、よりよい状態にするためのきっかけとなれば幸いである。
  最後に、このオーナー課税廃止については、来年度税制改正において、給与所得控除の限度額設定などの代替措置が導入される可能性がある。今後の議論の行方に注目したい。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2010.05.31
前のページにもどる
ページトップへ