>  今週のトピックス >  No.2053
専業主婦志向の妻増加 20代の価値観に変化の兆し
●  「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」という考え方に「賛成」が45%
  国立社会保障・人口問題研究所はこのほど「第4回全国家庭動向調査」の結果を発表した。家族に関する意識を尋ねた質問のうち、「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」という考え方に賛成する既婚女性の割合が、1993(平成5)年の調査開始以来、一貫して減少傾向にあったが、一転して前回調査(2003年)より3.9ポイント増え、45.0%が賛成と回答した。
  調査は5年ごとに行われ、今回は2008(平成20)年7月に全国の約1万3,000世帯を対象に実施した。回答が得られた69歳までの結婚している女性6,870人を分析している。
  この調査は、出産・子育ての現状、家族関係の実態を明らかにし、家庭機能の変化の動向や要因を把握することができるので、行政の資料としてだけではなく、企業経営者や従業員にとっても大変参考になるデータといえる。
●  20代の妻の専業主婦志向の割合が前回に比べて大幅増加
  専業主婦志向の妻が増加に転じたことは、大きな変化である。特に20代、30代の妻が実際に生活していく中で価値観が徐々に変化してきているのではないかと推測できる。就職難や保育所の待機児童の問題、仕事と育児を両立しにくい職場環境なども影響しているのではないだろうか。
  年齢別に見ると、29歳以下が47.9%で前回調査より12.2ポイントの大幅上昇となっている。30代が同7.6イント上昇の41.7%、40代も6.6ポイント上昇の39.8%。一方、50代は2.5ポイント低下の42.3%、60代は4ポイント低下の57.2%と低下傾向が続いたままである。
  このような経済情勢や雇用環境の中では、若い女性が仕事を通じてキャリアを積み重ねていくことをなかなかイメージできないし、そこに希望を持つことなどできないだろう。いろいろ考えるくらいなら専業主婦のほうが魅力的であると思ったのかもしれないが、いずれにしてもこのような事実を真剣に受け止めなければならない。
●  女性労働力率アップのために、やらなければならないこと
  専業主婦志向の妻の割合が増えていることは確かであるが、現実には夫の収入だけでは生活ができないという声が多いのも事実である。しかしながら、経済も低迷しており、各企業が既婚女性を積極的に雇用しようとする動きは残念ながらまだない。
  政府は、育児中の女性が負担なく働けるような社会および職場環境の構築を目指し、いろいろな活動をしているとはいえ、女性にとっては現実的には夫の家事・育児支援などがなければ、特に子どもが小さい間の共働きは難しいという意見も多い。夫側の働き方の改革がまさに求められているところである。
  政府および地方自治体だけでなく、経営者および各個人がどのように協力し合って、家族が生活しやすい社会を一緒につくっていくかが、今後の課題である。
  日本は深刻な労働力不足の時代がやってくることは確かである。女性の労働力率をアップさせるためにも、出産育児負担の大きい25〜34歳の女性が働き続けられる環境整備に全力を注がなければいけない。
国立社会保障・人口問題研究所「第4回全国家庭動向調査の結果の概要について」
http://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ4/NSFJ4_top.asp

(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.06.14
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