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小さな葬式が増えている
  少子高齢化や核家族化の影響、近所付き合いや親戚付き合いが希薄になってきた影響、そして不況の影響もあるのだろうか、お葬式のコンパクト化が進んでいる。
  故人の知人や友人、住んでいる地域の知り合いなどに広く告知して行う昔ながらの葬儀では、100人以上の参列者を迎えるため、ごく一般的なものでも200万円前後はかかってしまう。また、故人が亡くなってから数日のうちにバタバタと開催するため、遺族はゆっくり見送る暇もなく、また親族間や業者とのトラブルも起りやすい。
  小さな葬式を選ぶのは、「生活に余裕がないので出費は控えたい」という理由に加えて、「家族や親しい人だけでゆっくり見送りたい」「故人の遺志で」「(高齢などのため)身内や友人がほとんどいないから」「宗教儀式は必要ないから」といった理由も多く、葬式に対する人々の意識も大きく変化しつつあるようだ。
●  家族でゆっくり見送る「家族葬」
  小さな葬式として注目されているのが「家族葬」。故人が社会的地位のある方などの場合に、まず家族や親族などの身内だけで「密葬」を行い、その後に「本葬」を行うということは以前からあったが、最近は、一般の人でもごく近しい親族による葬式だけという例も多くなっている。
  家族で見送るだけなら自宅での葬式も可能だが、近所の人に知られたくない、親族が集まりにくいなどの理由で、葬儀用ホールなど自宅外で葬式を行うケースも増えている。こういった傾向を受けて、家族葬や小規模の葬式用の小さめのホールや、キッチンやバスルームが付いた普通の家のようなホールを提供する葬儀社を見かけるようになった。自宅にいるような環境で、他人に気をつかわず、家族や親しい人だけで思い出話をしながら故人を偲ぶ。こういう葬式は今後も増えていくだろう。
  覚えておきたいのは、小さな葬式だからといって経済的負担が少なくなるとは限らないということだ。葬式代で大きなウエートを占めるのは、(大きな)祭壇代と会場費、そして飲食代や返礼品(会葬御礼など)で、家族葬ではこれらの支払いを減らすことができる。その代わり参列者が少ないためお香典が少なく、その結果、実質的な負担は一般の葬儀とそれほど変わらないこともある。
  また、亡くなったことを聞きつけた方々からお線香をあげたいと、自宅に次々連絡があったり、訪ねてこられたりして、その対応で大変だったという事例もある。故人の交友関係が広かった場合には、別途お別れの場を設けることを検討してもいいかもしれない。少なくとも、故人と生前付き合いがあった方々には、葬式後それほど間をおかずに手紙などで連絡しておく配慮は必要だ。
●  「直葬」も増えている
  「直葬」とは、通夜や告別式などの儀式を行わず火葬のみで済ませることを指すが、身寄りの少ない高齢者が増えていることもあって、都市部では特に増えているそうだ。
  直葬だけなら20万円程度で済むため経済的負担は少ない。ただ最近では、経済的にゆとりがある人でも、「自分は直葬でいい」と考える人も現れるようになってきた。今のところは多くの人が「直葬では寂しい」と抵抗を感じるはずだが、今後件数が増えて、「直葬も選択肢の1つ」と受け入れられるようになるのかもしれない。
(山田静江 CFP®)
2010.06.21
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