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わが国企業の公的負担率は50.4%と高水準〜経済産業省
●  他国よりも10〜20%高い公的負担率
  経済産業省は6月7日、「企業の公的負担に関する国際比較調査」結果を公表し、わが国企業の総合的な公的負担の割合は50.4%にのぼり、国際的に非常な高水準と主張した。米英よりも10%程度高い法人税実負担率が全体を押し上げる要因と分析した。同省は、これに先立つ1日、「産業構造ビジョン」を公表し、アジア諸国の法人税率引下げ競争を踏まえ、現在約40%の法人実効税率を25〜30%に引き下げることを提言している。
  総合的な公的負担率は、法人税負担だけでなく、固定資産税その他の税負担、社会保険料の事業主負担も含めて算出したもの。その結果、わが国企業の総合的な公的負担の割合は実態ベースで50.4%(08年度・09年度を平準化)に達している。アメリカは42.8%(07年12月期)、イギリスは41.6%(09年3月期)、オランダは31.0%(06年12月期)などとなっており、わが国企業の公的負担は「国際的に非常な高水準にある」と主張した。
●  わが国企業の法人税実負担率は35.5%
  公的負担率の内訳のなかで法人税実負担率(法人税等/税引前当期純損益)をみると、特に、アメリカの27.8%やイギリスの22.4%と比べ、わが国は35.5%と10%前後高いのが現状であり、わが国企業の公的負担率を押し上げる最大の要因と分析している。
  産業別にみると、製造業の法人税実負担率は、全体で40.0%となっており、表面税率(法人税率、法人住民税率、事業税率を調整した企業が負担する法定の税率水準)40.69%に近い値となっている。総合的な公的負担率についても51.5%と、高水準となっている。その他の産業では、「電力・ガス・情報通信」が法人実負担率48.8%、総合的な公的負担率66.5%とかなりの高水準だが、「卸・小売」は同18.2%、40.1%と低い。
  また、総合的な公的負担率50.4%のうち、国税分と社会保険料の事業主負担が31.8%、地方税分は18.6%で全体の負担の約37%を占め、企業にとって大きな負担となっていることも示している。地方税負担のなかでも、固定資産税(34.0%)、事業所の所得割(32.5%)はそれぞれ3割以上を占めて大きな負担となっていることを問題視している。
●  企業が負担に感じるのは「税務調査対応」
  なお、この調査は、わが国企業の公的負担の動向を把握すべく、自動車や鉄鋼、電機・電子、商社・卸など主要業種の代表企業計95社を対象に実施したもの。1社あたりの国際・国内税務業務に要する諸費用の総額は1億6,107万円(うち、国内税務1億1,677万円、国際税務4,430万円)となっている。国際税務では、「移転価格税制」が52%ともっとも大きな負担を占めており、次いで「外国税額控除」が21%、「タックス・ヘイブン税制」が13%などとなっている。
  このほか、調査対象企業が負担に感じている項目(3項目選択)としては、「税務調査対応」(71.7%)がもっとも多く、次いで「会計と税法との差異に関する申告調整」(55.4%)、「法人税申告書の添付書類」(37.0%)、「事業税付加価値割の計算」(27.2%)、「自治体別の地方税申告」(21.7%)、「従業員の所得税等の源泉徴収」(21.7%)などが挙げられている。
参考資料:企業の公的負担に関する国際比較調査結果の詳細は↓
http://www.meti.go.jp/press/20100607004/20100607004-2.pdf

(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.06.21
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