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「腰椎椎間板ヘルニア」告知における留意点
●  「腰椎椎間板ヘルニア」とは
  腰痛や腰椎椎間板ヘルニアは、お客さまからよく告知をいただく疾病ではないかと思います。皆さまの中にも腰痛持ちの方がいらっしゃるのでは? さて、一口に「背骨」といっても脊椎はいくつもの骨が重なってできており、上から頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎5個、尾椎1個(合計30個!)もの骨で構成されています。
  椎間板は椎体と椎体の間の圧力を和らげるクッションの役割をしていて、外周を取り巻くコラーゲン様の線維輪と、中央のゼリー状の髄核から構成されています。
  椎間板ヘルニアはこの線維輪が脊柱管へ押し出される(はみだす)ことをいいます。これが神経にさわり、痛み、しびれ、運動麻痺といった症状がでます。
  椎間板ヘルニアは頸椎・胸椎・腰椎のいずれにも起こる可能性がありますが、重力や可動性の影響で腰椎に最も多くみられます。「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」(2005)によると、人口の約1%が罹患し、20〜40代で男性に多く発生します。大部分(80%)が自然経過か保存的療法だけで改善を示しますが、40〜80%に再発がみられます。
●  症状と経過
  最も多いのが片側の下肢痛ですが、安静にしていると軽快するのが特徴です。しびれなどの感覚障害や運動神経麻痺による筋力低下、まれに排尿障害を呈する場合もあります。
  椎間板ヘルニアが巨大な場合には、両側性に症状が生じたり、間欠性跛行(一定距離を歩行後に下肢に疼痛を感じて歩けなくなるのですが、少し休むと痛みが軽減してまた歩けるようになる症状)が出現したりします。椎間板ヘルニアの出現部位が上位の場合は腰痛や股関節痛、下位では坐骨神経痛を呈することもあります。
●  検査と治療
  X線検査・MRI・ミエログラフィー等の検査をします。治療については、原則保存療法で、鎮痛剤・牽引・コルセット固定・温熱療法・電気刺激療法などを行います。疼痛対策として神経根・硬膜外ブロック療法などもあります。これらの保存療法で約9割が改善しますが、改善しない場合は入院の上、安静・持続牽引やブッロク療法等を2〜3週間行うこともあります。
  絶対的手術適応は排尿障害がある場合のみですが、激しい痛みを伴う場合、筋力低下、3カ月以上痛みが持続する場合などは手術の適応となります。肉眼的・顕微鏡的・内視鏡的に椎間板ヘルニアを摘出手術する方法があります。またレーザー治療や経皮的椎間板ヘルニア摘出術もありますが適応が限られています。
●  ご契約をいただく際には
  腰椎椎間板ヘルニアの症状である「腰痛」には悪性腫瘍など重篤な疾患の前症状でもあるため、確定診断されなければ加入が厳しい場合もあります。告知をいただく場合は、部位(詳細)と治療期間、治療内容・再発の有無をご確認ください。また、入院や手術をした場合には術式や合併症・後遺症の有無の報告が必要です。
  完治して後遺症等なければ死亡保険は標準体での引受、医療保険は経過年数に応じて部位不担保での引受となるでしょう。ただし、再発を繰り返している場合は死亡保険については削減などの条件が付加されるかもしれません。腰椎椎間板ヘルニアと確定診断されていれば、がん保険の引受については問題ないでしょう。

※腰椎椎間板ヘルニアガイドライン策定委員会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」(2005)南江堂
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2010.06.28
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