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賞与支給時の実務上の注意点
●  夏季賞与の季節到来
  6月から7月にかけては、夏季賞与の時期である。支給金額に頭を悩ませている経営者も多いのではないだろうか。上場企業では、今年の夏季賞与は昨年より増加するとのことであるが、中小企業の実情とは程遠い印象を受ける。
  中小企業では、賞与はあらかじめ月収何カ月分と定めているケースをよく見かける。他には、営業利益や経常利益の一定率、労働分配率などから計算する方法も考えられるが、いずれにしても、最後は資金繰りとの相談になるだろう。賞与の原資確保というのが、中小企業の課題である。
●  計画的支給のための引当金活用
  計画的に賞与を支給するためには、月次試算表を作る段階で、賞与引当金を前もって計上しておきたい。賞与引当金は、既に税務上は廃止されているため、計上しても税金を計算する上での損金としては認められないが、経営管理上の手法としては、今もなお有効である。
  賞与引当金を計上するためには、あらかじめ年間賞与の金額について予算を作成しておかなければならない。予算作成に当たっては、上記の月収換算や労働分配率、前期実績などに基づいて決定することになるだろう。年間金額が決まれば、それを12カ月換算し、月次ベースで引当金として計上していく。
  引当金計上のメリットは、利益を平準化できるところにあるが、さらに資金繰り面でも、賞与支給に向けて毎月準備しておくべきおおまかな金額を把握することができる。ただし、実際に支給する際には、社会保険料の会社負担分があるため、必要金額は約10%増加するので、注意が必要である。
●  役員賞与の取扱い
  なお、役員に対する賞与については、支給すること自体に問題はないが、税務上は定期同額給与にならないため、原則損金として認められない。役員賞与を損金として計上するためには、事前確定届出給与に関する届出が原則必要になる。これは、あらかじめ役員に対して支給する時期と金額を届け出ておき、その通りに支給が行われた場合に、損金として認められる特例である。
  ただし、この特例を利用する場合には、事前に届け出た時期と金額を守らなければ、損金として認められない。実務的には、役員の場合、賞与も含めた年収の12分の1を役員報酬として支払う方がリスクが少ないと思われる。
●  所得税、社会保険計算上の注意点
  賞与支給時の源泉所得税の計算については、通常の給与計算時とは異なるため、注意したい。毎月の給与計算で使う税額表ではなく、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用する。計算に当たっては、前月の社会保険料等控除後の給与等の金額と扶養親族等の数が必要になる。
  また社会保険については、賞与支給後5日以内に、各年金事務所に賞与支払届を提出する必要がある。なお、賞与支払届については、賞与の支払いがなかった場合にも提出が必要となる。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2010.06.28
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