>  今週のトピックス >  No.2061
うつ病など精神疾患による労災申請
前年比22%増 過去最多の1,136人
●  精神疾患による労災申請増加の理由
  厚生労働省が6月14日に発表した「平成21年度における脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況について」によると、仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症し、平成21年度に労災申請を請求した人の数は前年度に比べて209人多い1,136人で過去最多となった。労災として認定された人数は前年度より減少しているものの、234人と過去3番目に高い水準であることから、政府、企業とも今後の対策が求められてくる。
  今回の結果を受けて厚生労働省は、労災申請件数が増加した理由として、患者数自体が増加したことや、昨年、精神疾患に関する労災認定基準を改正したことで新たに労災に該当すると思われるケースが増えたからではないかと分析している。
●  労災認定された人が一番多いのは、「30歳〜39歳」
  今回の労災認定を受けた人を年代別にみると、働き盛りの「30〜39歳」の層が75人ともっとも多く、「40〜49歳」の57人、「20〜29歳」の55人、「50〜59歳」の38人と続いている。働き盛りの30代は、責任ある仕事を任され、長時間働いてしまう年代でもある。また、部下の面倒をみなければならない年齢でもあり、上司として多大なストレスを感じることも多い。実際、低迷する経済環境の中で、リストラも増し、人事異動も大胆に行われて、慣れない仕事をいきなり任されるようなことも珍しくない。それらが原因になり精神疾患を発症する場合も多いのではないかと思われる。メンタルヘルスに関しては、基本的な知識について理解してもらうためにも、従業員向けのセミナーの開催などが望まれる。また中央労働災害防止協会がWeb上で運営している「労働者の疲労蓄積度チェックリスト」などの情報も従業員に教えて随時セルフチェックしてもらうようにアナウンスしたいところである。
●  昨年4月から精神疾患に関する労災認定基準が見直し
  厚生労働省は平成21年4月に、労災認定基準に関する見直しを行い各労働局長に通達を出した。改正内容としては、会社の合併や成果主義の採用、効率化など働く環境の変化を念頭に、ストレスの要因となる職場の出来事として「違法行為を強要された」「仕事で多額の損失を出した」など12項目を追加した。
  最近、退職勧奨の行き過ぎでメンタル不調になり、会社の責任を提訴されるケースも多くなってきている。また現場レベルでよくあるケースとして、今まで複数で行っていた業務をリストラにより1人で担当するようになった、という事例も心理負荷があったとみなされるようになった。人によっても心理的負荷の基準は違うが、客観的にみて行き過ぎた業務命令だったりすると、それはのちに問題となってしまう可能性があるので要注意である。
  さて労災の申請の請求は、今後ますます増えることが予測されるが、労災認定されれば企業側も民事上の責任を追及される可能性が高いため、各企業は早急に専門家などを活用し、就業規則や諸規定の見直し、社内ルールを改善し、リスクを低減させなければならない。
参考:厚生労働省「平成21年度における
脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000006kgm.html

(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.06.28
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