>  今週のトピックス >  No.2065
「幼保一体化」の現状と今後の課題
  政府は、子育て支援策の一環として、幼稚園と保育園を「こども園」に統合していく方針を打ち出した。幼稚園と保育園を一体化する「幼保一体化」を、強行に進めようというものだ。
  景気停滞による夫の収入の伸び悩みやライフスタイルの変化とともに、子育て中にも働きたい女性や働かざるを得ない女性が増えているが、保育園はパンク状態だ。特に大都市圏の自治体では100人以上の待機児童をかかえているところも多い。保育園の定員を増やしてもそれを上回る勢いで待機児童数が増えているのが現状だ。
  自治体の財源には限りがあるので、保育所の新設はそう簡単には進まない。そのため少子化で入園者が少なくなった幼稚園を活用しようというわけだ。
●  「認定こども園」制度はスタートしたが…
  2006年10月にスタートした「認定こども園」は、幼稚園、保育園のうち、(1)就学前の子どもに幼児教育・保育を提供すること、(2)地域における子育て支援を行う機能、などの基準を満たした施設である。親が働いているかどうかなどにかかわらず利用できる施設を増やすことで、子育て支援をしていこうというものだ。
  しかしながら、幼稚園が保育所としての機能を持つためには、調理室を新たに作るなどの多額の投資が必要になる。さらに手続きが煩雑であるなどの理由で、認定こども園の普及は進んでおらず、待機児童問題を解消するには至っていない。
●  利用者、事業者ともに多様化する「こども園」
  福祉の性格が強い「保育所」と、教育機関としての「幼稚園」とは、設立の目的が異なるため統合は難しいとされている。しかし少子化を少しでも食い止めるには、のんびり改革してはいられない。そのため、両者の垣根を取り払って、最終的には統合させることを明言したのであろう。
  政府がイメージしているこども園は、両親が働いていたり保育に欠けたり、という利用条件を撤廃する一方で、運営者側にも、学校法人や社会福祉法人のほか、株式会社など多様な事業者の参入を想定している。保育の民営化を進めることで、多様なニーズに対応できる可能性があるものの、本当に保育サービスが必要な人が利用できなくなるのではないか、という不安も指摘されている。
  「子どもに幼児教育と保育を提供する」施設としての「こども園」が、具体的にどのような方向に向かっていくのか、今後の展開を見守りたい。
(山田静江 CFP®)
2010.07.05
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