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管理職のワーク・ライフ・バランスの現状と課題
●  管理職の3割弱が12時間以上働いている
  東京大学社会科学研究所では、民間企業と共同して「ワーク・ライフ・バランス推進・研究プロジェクト」を2008年10月に発足させ、企業におけるワーク・ライフ・バランス推進と働き方の関係などに関する調査研究を行ってきた。前回の調査で管理職が非常に多忙かつ管理職自身がワーク・ライフ・バランスを実現できていない現状にあり、職場マネジメントに課題が多いことが明らかになった。それを受けて2009年度の調査では、管理職の働き方や職場マネジメントの実態を把握した上で、社員のワーク・ライフ・バランスを実現する職場マネジメントの特徴を明らかにすべく、管理職を対象としたアンケート調査を実施した。
  調査結果によると管理職の3割弱が、1日12時間以上働いている現状が明らかになった。また平均的な1日の労働時間が12時間未満の管理職の方が、12時間以上の管理職よりもワーク・ライフ・バランス意識が高いこともわかった。
●  在社時間が12時間以上の管理職は、有給休暇の取得率が低い
  調査結果によると、管理職の平均的な出勤日の在社時間(退社時間−出社時間)は、「10時間以 上12時間未満」が全体の約2分の1を占め、所定労働時間よりも1日あたり2時間から4時間長く在社していると考えられる。12時間以上会社で働く管理職も27.3%(課長クラスで29.8%、部長クラスで22.9%)おり、管理職は総体的に多忙であるといえる。また12時間以上働く管理職のうち92.3%が労働時間を減らしたいと考えており、決して自ら望んで長く働いているわけではない。
  また、在社時間と有給休暇の取得率の関係をみてみると、在社時間が12時間以上の管理職の有給休暇の取得率は「1割以下」が38.6%、「1割〜2割以下」が31.9%となっており、日ごろの在社時間が長い管理職ほど有給休暇も利用せず、長時間労働になっている傾向にある。
●  管理職も労働時間や働き方のモニタリングが必要
  いずれにしても各企業は、管理職のワーク・ライフ・バランスの状況をあらためて現状分析してみる必要がある。管理職のワーク・ライフ・バランスが部下のワーク・ライフ・バランスにも大きな影響を与え、それらが企業の生産性や付加価値の大きな変化につながることを忘れてはならない。
  最後に今回の調査結果を受けて、民間企業の参加者の意見を反映したプロジェクトメンバーの提言を4つ紹介しておく。
  提言1   部下のワーク・ライフ・バランスと職場生産性向上の両者を実現させるためには、管理職が部下の業務遂行状況を把握し支援する能力を高めることが重要である。
  提言2   部下のワーク・ライフ・バランスと職場生産性向上の両者を実現させるためには、管理職自身がメリハリをつけた働き方を実践するとともに所定内労働時間で仕事を終えることを推奨する意識を持つことが重要である。
  提言3   労働時間・休憩・休日に関する労働基準法上の規定の適用から除外されている管理職に対しても労働時間や働き方をモニタリングし、管理職が長時間労働になることを抑止して「適正な部下管理」を実行できる時間を確保することが重要である。
  提言4   会社によるワーク・ライフ・バランス支援への取組や労働時間管理の改善に向けた取組は「管理職のマネジメント」力を高めることから、企業は組織的にこれらに取り組むことが重要である
参考:東京大学社会科学研究所 ワーク・ライフ・バランス推進・研究プロジェクト
http://wlb.iss.u-tokyo.ac.jp/survey_results_j.html

(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.07.12
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