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「ノー残業デー」でも男性の約5割は、定時に退社できない
●  「ノー残業デー」がある人は、約3割
  このたび残業に関する意識調査として、退社後の時間の過ごし方を含めた「ノー残業デー」に関する調査結果が発表された。株式会社アイシェアがネットユーザーに対し実施したもので、有効回答数は20代から40代の男女429名と、比較的若い年代が中心である。前回のトピックス(No.2069)で、管理職の3割が平均12時間以上働いているということを書いたが、今回の調査も20代から40代の労働時間に関係する内容だけに、比較してみるのもおもしろい。
  各企業は労働時間と経費の削減およびワーク・ライフ・バランスの充実のため、「ノー残業デー」を設けるようになった。メディアや各企業のホームページでも見かけることが多くなったが、その実態はなかなかわからなかった。今回の「ノー残業デー」に関する調査により、その意外な実態が明らかになったので、取り上げてみようと思う。
  調査によると、「仕事をしていない」人数を除いた就業者における比率では、職場に“ノー残業デー”が「ある」人の31.4%に対し、「ない」人は68.6%となった。
●  定時退社「できる」は、58.6%
  ノー残業デーがある人が約3割という数字を多いとみるか少ないとみるかは、自分の職種や業界によっても異なるのはやむを得ないが、もう少し多くの企業が制度として導入しているのではないかと思っていた人も多いのではないか。
  このところの経済不況を考えれば、「仕事が少ないから定時に帰るのが当たり前」になっている企業も少なくないため、ノー残業デーをわざわざ設けていないだけ、という企業も結構あるのだろう。
  今回の調査結果によると、“ノー残業デー”には定時退社できるかという質問には、「必ずできる」人は14.4%だったが、「できることが多い(44.1%)」との合計58.6%が『できる』と回答。定時退社『できる』割合を性別で見ると、男性の49.3%に対し、女性は75.0%と女性のほうが25.7ポイントも高い。逆にいえば、男性は約5割がノー残業デーでも定時退社できないということになり、これは大きな問題ではないか。年代別では20代(48.6%)に比べ、30代(63.6%)・40代(63.4%)で定時退社『できる』割合が高くなっており、年齢があがれば自分で仕事を調整できることも増えてくるので、定時退社もしやすくなるというのは理解できる。
●  ノー残業デーは「必要」が6割を超える
  就業者たちが定時退社したあとでどのような時間の過ごし方をしているのかと聞いたところ(複数回答)、「自宅でくつろぐ」が87.7%で、性別・年代を問わず8割超と圧倒的多数。以下、「買い物に行く(26.2%)」「飲みに行く(20.0%)」「食事に行く(18.5%)」「趣味・スポーツ(13.8%)」「遊びに行く(9.2%)」「スクール・習い事(4.6%)」の順。「買い物に行く」は女性(33.3%)や20代(50.0%)で、「飲みに行く」は男性(28.6%)や40代(26.9%)で高比率なのが目立っている。
  現場で働く人は、ノー残業デー制度に対して、勤務先の風土など自分の置かれた環境により賛成派と反対派それぞれに分かれる。今回の調査では、ノー残業デーを必要とする人は、6割を超えているという結果が出たが、反対派の声も当然ある。
  まずノー残業デーを設けるということは、残業が前提となっているとも読み取れるので、それはあまり好ましくないと思われる。そもそも残業しなくても仕事がまわるように改善しなければならないはずである。また、ノー残業デーを設けることは、それ以外の日が早く帰りにくくなるという声もある。
  働く人が個人の状況にあわせて自由に退社できるのが理想だが、ノー残業デーを設けることは、働き方を固定化し、柔軟性を欠くおそれがある。それゆえにノー残業デーについては各企業が自社の環境を慎重に分析し、現場の声を尊重したうえで導入すべきである。
参考:株式会社アイシェア「ノー残業デーに関する意識調査」
http://release.center.jp/2010/07/1201.html

(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2010.07.26
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