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導入から10年、介護保険制度の課題
  介護保険法が2000年4月に施行されてから早くも10年が経つ。高齢化や核家族化で高齢者のみの世帯が増えることが予想され、介護が必要な高齢者への対策をどうするか議論が行なわれ、その解決策の1つとして介護保険が導入された。制度の不備や限界などが指摘されるものの、2009年には、469万人の人が要介護の認定を受け、そのうち384万人が実際に介護サービスを利用している。高齢者を社会全体で支えるしくみの一端を担う重要な制度になったといえるだろう。
●  介護保険導入によるプラスの側面
  介護保険導入前には、介護サービスは福祉制度であり、サービスの種類も限られたもので誰もが利用できるものではなかった。それが「保険制度」となったことで、介護が必要な人全てが利用できるしくみとなり、また身近な存在になったといえるだろう。
  また、介護保険導入前後から、高齢者や介護についての相談窓口が増えている。自治体の高齢(福祉)課や地域包括支援センター、在宅介護支援センター、高齢者総合相談センターのほか、各介護事業所などである。十分とはいえないものの、1人暮らしの高齢者を見守る行政のしくみや市民活動なども、それぞれの地域で活発になってきている。
●  介護保険の主な課題
  一方で多くの課題も残されている。
  まずは介護保険の財政難の問題。介護サービスを利用する要介護者増による給付の増大で今後の制度維持が困難になるのではないかと懸念されている。慢性的な財政難に苦しむ国や自治体の負担率を上げることは難しく、だからといって、保険料の大幅な引き上げや保険料負担者の拡大(現在の40歳以上の対象年齢を引き下げる)、現在1割の自己負担割合の引き上げなどの利用者負担増も難しいということで、2006年の介護保険制度改革では、要介護認定の厳格化、要介護になる高齢者を減らすため、軽度の要支援者への給付は介護予防を中心とするものへと変わるなど、給付を制限する見直しが行われた。特別養護老人ホームなどの介護施設での、居住費(家賃のようなもの)や食費(以前は食材費のみ徴収)の徴収も始まった。
  次回2012年の改革では、支払う保険料と受けられる給付とのバランスをどうするか(サービスを拡大すれば保険料負担は重くなる)、労働条件の悪さから介護従事者が増えない現状をどうするか、施設と在宅それぞれの介護サービスの給付のあり方などが焦点となる。

  介護保険は地域ごとに制度を構築できる制度であり、住民の声を反映するしくみもある。次回2012年の介護保険改革に向けて、一人ひとりが介護保険を中心とした高齢者を支えるしくみのあり方について考えていくことが必要だろう。
(山田静江 CFP®)
2010.08.02
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