>  今週のトピックス >  No.2086
2009年度国税の滞納残高は11年連続で減少
●  6年連続で1兆円の大台を割った新規滞納額
  今年3月末時点での法人税や消費税など国税の滞納残高が前年度に比べ3.8%減の1兆4,955億円となり、1999年度以降11年連続で減少したことが、国税庁がこのほど発表した2009年度租税滞納状況で分かった。新規発生滞納額は前年度に比べ16.8%減の7,478億円と大幅に減少し、整理済額は同16.0%減の8,061億円と減少したものの、新規発生滞納額を上回ったため滞納残高も減少した。
  今年3月までの1年間(2009年度)に発生した新規滞納額は大幅に減少し、2004年度に18年ぶりに1兆円を切って以来、6年連続で大台を割っている。また、2009年度の滞納発生割合(新期発生滞納額/徴収決定済額)は1.8%と前年度を0.1ポイント下回った。滞納発生割合は、2004年度以降、6年連続で2%を下回り低い水準を維持している。この結果、滞納残高はピークの1998年度(2兆8,149億円)の約53%まで減少している。
●  消費税の滞納残高も10年連続の減少
  税目別にみると、消費税は、新規発生滞納額が前年度比9.1%減の3,742億円と3年ぶりに減少したが、税目別では5年連続で最多となっている。一方で、整理済額が3,860億円と上回ったため、滞納残高は2.6%減の4,419億円と、10年連続で減少した。法人税も、新規発生滞納額は同41.4%減の1,074億円と3年ぶりに減少し、整理済額が1,264億円と上回ったため、滞納残高も8.7%減の2,000億円と2年連続で減少した。
  国税庁は、(1)新規滞納に関しては、全国の国税局(所)に設置している「集中電話催告センター室」での整理、(2)処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となって訴訟を提起して整理、(3)財産を隠ぺいして滞納処分を免れる案件については、国税徴収法の「滞納処分免脱罪」による告発で整理することで、効果的・効率的に処理している。
  こうした新規滞納の未然防止、大口・悪質事案や処理困難事案を中心に厳正・適格な滞納整理を実施したことで、今年3月末時点での全税目合計の滞納残高は前年度を3.8%下回る1兆4,955億円となり、11年連続での減少となった。滞納残高が1兆5千億円を下回ったのは1990年度以来19年ぶりとなる。
●  差し押さえを免れる目的で娘に譲渡装い財産を隠ぺい
  主な滞納処分事例をみると、関東信越国税局管内の元スクラップ業者Aは、約3,000万円の源泉所得税、申告所得税及び消費税の滞納により、税務署から財産を差し押さえる旨の予告を受けた直後に、自宅の土地・建物2,400万円を娘に譲渡したように装い、所有権を移転させる虚偽の登記を行い、財産を隠ぺいした事例が報告されている。
  その結果、同局の告発に基づき滞納者Aは逮捕・起訴され、懲役1年6カ月(執行猶予3年)の刑が確定している。
同租税滞納状況の詳細は↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2010/sozei_taino/index.htm

(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.08.09
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