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「子宮筋腫」告知における留意点
  子宮筋腫は成人女性の約25%に発生する良性の疾患です。とはいっても、腫瘍径が7〜8cmを超えると悪性の可能性も出てくるため保険の加入に際してはその判別が重要となります。
  子宮筋腫のはっきりとした原因は不明ですが、女性ホルモン(エストロゲン)の影響で発育すると考えられています。20代から散在し、30〜40代でよく見つかり、50代の閉経期以降は縮小して自然に消失することもあります。
●  症状
  症状には下記のようなものがあります。ただし小さいうちは半数以上が無症状です。巨大になると、筋腫分娩といって子宮頸部から膣に脱出することもあります。
・月経困難症
・過多月経、不正出血
・貧血(過多月経や不正出血によりゆっくりと鉄欠乏性貧血が進行します)
・便秘、頻尿(骨盤内の臓器(直腸・膀胱)が圧迫されるため)
・腰痛(骨盤内の神経が圧迫されるため)
・不妊・流産(臓器が圧迫されるため)
●  治療
経過観察:小さいもの・無症状の場合。
薬物療法:鎮痛剤・弛緩剤・止血剤・増血剤(鉄剤)・漢方。
偽閉経療法:女性ホルモンの分泌を抑えることで人工的に閉経状態を作り出し、筋腫を縮小させる療法です。ホルモン剤には注射薬と点鼻薬がありますが、副作用があるので長期間は使用できず、また止めると元にもどります。手術前に一時的に筋腫を小さくするために使用することもあります。
子宮全摘出術:開腹・腹腔鏡・膣式(膣から子宮を引き出して摘出)があります。
子宮筋腫核出術:開腹・腹腔鏡・子宮鏡下(3cm程度の粘膜下筋腫の場合)。しかし、目に見えない筋腫核は取りきれないので、再発率も高くなります。
子宮動脈塞栓術(UAE):子宮筋腫への栄養血管を塞ぎ、筋腫だけを徐々に壊死・縮小させます(1年後約30%に縮小)。日帰りも可能。
MRIガイド下集束超音波手術(FUS):微弱な超音波を束にして一点集中させて筋腫のみ焼灼します。日帰りも可能。
マイクロ波子宮内膜焼灼術(MAE):直径4mm伸縮自在のファイバー状のアプリケーターを子宮内に挿入し先端からマイクロ波(電子レンジで使用されているもの)を子宮内膜へ照射し焼灼して壊死させます。1カ所約1分で複数個所の焼灼も可能です。
●  ご契約をいただく際には
  子宮筋腫は一般に良性の疾患なので、死亡保険に関しては現症(小さな筋腫を経過観察しているもの)でも標準体での加入ができるでしょう。医療保険については閉経期間までは手術の可能性があるので部位不担保等の条件付きでの加入となると思われます。
  手術を受けている場合は悪性疾患の可能性を除外するためにも、より詳細の告知が必要となります。「治療開始期(初診日)」「術式」「入院期間」「治療内容」「診療機関名」等の詳細を告知することをおすすめします。
  術後であっても、子宮筋腫核出術の場合は残存組織から再発の可能性があるので、医療保険は部位不担保等の条件付きでの加入となるでしょう。
  なお、30代前半までの妊娠可能期あるいは50歳以降で子宮全摘出術をしている場合や、入院期間が長期にわたる場合、また放射線・化学療法等をしている場合は悪性疾患の可能性も考えられます。病理組織診断の記載のある診断書の取り付けが必要となるでしょう。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2010.08.23
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