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「公認会計士制度に関する懇談会」が中間報告
●  合格しても資格取得に必要な実務経験が得られない者が発生
  金融庁内に設置された公認会計士制度に関する懇談会はこのほど、公認会計士制度改革に向けた中間報告書(案)をまとめ公表した。「試験合格しても公認会計士となるための資格を取得できない者(待機合格者)等への対応」「グローバル化等の環境変化に対応した監査・会計分野の人材育成」が骨子。
  現行の問題点として提起されていることの一つに、公認会計士の資格取得のためには実務経験(就職)が不可欠だが、現状では無職で受験に取り組んできたいわゆる「受験浪人」の合格者が多く、合格者(平均年齢26〜27歳)が就職活動を行う時期は、監査業界や経済界等の採用慣行と合っていないことがある。
  平成21年論文式試験合格者のサンプル調査(約1,800人、平均年齢26歳)によれば、就業せずに受験勉強に専念した者が約4割(同25歳)、退職して受験勉強に専念した者が約2割(同30歳)と、無職で高い年齢まで努力した受験浪人が約6割を占める。
  結果的に、合格しても資格取得に必要な実務経験を得られない者が発生している。上記サンプル調査結果によれば、合格者の就職内定率は約7割にとどまっているが、在学中の者が約8割を超えているのに対し、就業せずに受験勉強した者は約6割程度と低く、全体としてみても年齢が高いほど内定率は低い。
●  科目別合格等の有効期間を10年間に延長
  この「待機合格者をできるだけ出さない対策」として、1段階目試験(短答式)の合格から、例えば2年間は実務経験なしで2段階試験(論文式)を受験できる。ただし、2段階目試験の合格までに時間がかかる者は(例えば3年以上)、2段階目試験の前に実務経験を得ることを求める。
  また、働きながらの受験や資格取得を促進するため、実務経験を得た者の科目別合格等の有効期間を、例えば現行の2年から10年に延長する。就職についての意思決定等に資するため、一段階目試験および二段階目試験の合格者全員に合格通知を通知する。合格は就職を保証しないこと、高齢になるほど合格しても就職できない傾向があること等を十分に周知すること、などを提案している。
●  「財務会計士(仮称)」の創設を提案
  一方、監査・会計分野の人材育成においては、(1)経済成長や企業の国際競争力強化のために重要な非監査サービスの人材育成が不十分、(2)グローバル化や多角化の進展のなかで、企業内会計実務は複雑化・高度化しており、企業の会計基礎力や会計リテラシー向上のため企業内専門家の育成が必要、といった問題点が挙げられている。
  このため、「監査をできる公認会計士」に至る前の段階の資格として、非監査サービスや企業内実務を担う会計の専門資格として、例えば「財務会計士(仮称)」を創設、資格取得者には日本公認会計士協会への入会を義務付け、倫理規定を適用することや、監査法人の非監査サービスの改善の方策を検討する。
  金融庁は、今回公表した中間報告書に基づき、より詳細な内容や残された論点等について引き続き検討を進めた上で、来年の通常国会に公認会計士法の改正案を提出し、成立後3年程度の経過措置を設けて新制度に移行したい考えだ。
同中間報告書の全文は↓
http://www.fsa.go.jp/news/22/sonota/20100804-4/01.pdf

(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2010.08.23
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