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住宅ローン破たん急増
  景気低迷の影響は、多くの人のマイホームの夢を打ち砕いている。不動産競売流通協会の全国調査によると、競売にかけられた一戸建て住宅とマンションは、2009年度には約6万件。この数はその前年の1.3倍にあたるそうだ。6万件以外にも住宅ローンが払えなくて家を売却した人がいるはずなので、実際にはこの数倍の家族が、泣く泣くマイホームを手放したということだろう。
  住宅ローンが返せなくなった場合、普通の不動産売買のような形式で売却(任意売却)することもできるし競売より高く売れるので、通常はそちらを選ぶ。しかし、銀行や保証会社等との話し合いがうまくいかなかったときや、一定の期間内に売却できなかったときには、競売にかけられて強制的に家を追い出されることもある。
●  住宅が売れてもローンが返せない
  たとえマイホームを手放すことになっても、家を売ってローンを完済できるのなら、まだいい。しかし、売却代金よりローンの残債の方が多いなら、マイホームを手放した上に、高利のローンを背負うことになるのだ。
  住宅ローンは、家や土地という担保があるからこそ、低い利率で借りることができる。しかし、家を売却したあとの残債分については、住宅ローン扱いとはならず高金利が適用されるため、その返済の負担は重くのしかかる。
  残債が多く残ってしまう理由の一つが、十分な頭金なしで家を購入してしまったこと。長期で返済する住宅ローンの場合、ローン残高が減るスピードより、借り入れ対象となる家やマンションの価値(売却したときの価格)が下がるスピードの方が早い。頭金を払っていれば、その分ローン借入額は少なくて済むため、残債も少なくなる。
  「頭金なしでも家を買えます」という甘い誘いに乗って無理なマイホーム購入に踏み切ってしまう人は少なくないが、「万一ローンが払えなくなったときに、家を売ってもローンが残る」という、大きなリスクを背負うことになる。
●  収入が減らなくても、金利アップで家計はピンチ
  そもそも住宅ローン破たんが増え始めたのは2年ほど前。平成10年に住宅金融公庫の住宅ローンが、当初10年間2%という破格の低金利だったころに家を購入した人が、11年目の金利アップによる返済額増を迎えたことも理由の一つだろう。
  3,000万円を借りて、30年間で返済するケースで試算してみよう。当初10年間は金利が2%なので、月々の返済額は11万800円、年間で133万円弱である。それが11年目以降は金利が4%になるため、月々の返済額は13万2,800円と2万2,000円も増える。年間では26万4,000円増だ。
  10年前に家を買ったご家庭の多くは、お子さんが成長して学費や塾代などの教育費がかかっているはずだ。不況で収入が減り、子の成長とともに支出が増えているのに加えて、ローン返済額も増えたのでは、家計が持ちこたえられなくなるのも、想像がつくというものだ。家族の幸せを壊さないためにも、マイホームを購入するときには、しっかりした資金計画と資金準備は欠かせない。
参考:朝日新聞 2010年8月14日付け朝刊

(山田静江 CFP®)
2010.08.30
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