>  今週のトピックス >  No.2098
年金暮らしも楽じゃない
  子ども手当は支給されたものの、景気動向が依然厳しい折、「給与が上がらず生活が苦しい」というのが多くの人々の実感であろう。
  とはいっても、これは現役世代の話である。では、年金受給世代の暮らしぶりはどんなものなのだろうか。そこで、高齢世代の暮らしぶりを推測してみたのが以下の結果だ。
●  収入も支出も減少している
  表1は、家計調査年報(総務省)により「世帯主が60歳以上の無職世帯」の近年の家計収支を時系列で追ったものだ。
  過去6年で、高齢世帯の収入は月190,112円から183,459円に(約3.5%)ダウンしている。
  一方、支出についても月232,986円から228,790円へ(約1.8%)ダウンとなっている。「実収入−実支出」が赤字であり、貯蓄等の資産を毎月45,000円程取り崩しているのが高齢世帯の家計の実情のようだ。

  【表1】実収入と実支出(月額)の推移
    
  実収入 実支出 赤字額
平成15年 190,112円 232,986円 42,874円
平成17年 187,909円 233,492円 45,584円
平成19年 186,235円 232,776円 46,541円
平成21年 183,459円 228,790円 45,331円
  注.端数処理の関係で、「実収入−実支出」と「赤字額」が一致しない場合がある。
●  非消費支出(税・社会保険料)の負担は重くなってきた
  さらに、そのなかで実際の消費行動に使うことのできない「税・社会保険料」などの非消費支出の割合を調べたのが表2である。

  【表2】実支出と非消費支出(税・社会保険料/月額)の推移
    
  実支出
(a)
非消費支出
(b)
非消費支出占率(b/a) 消費支出
平成15年 232,986円 20,806円 8.9% 212,180円
平成17年 233,492円 21,356円 9.1% 212,137円
平成19年 232,776円 24,824円 10.7% 207,952円
平成21年 228,790円 24,592円 10.7% 204,198円
  注.端数処理の関係で、「消費支出と非消費支出の合計」が「実支出」と一致しない場合がある。
  前述のとおり減少している実支出のなかにあって、非消費支出はじわりと増えつつある。絶対額も増大傾向だが、実支出の中に占める割合も10%を超える水準になってきている。
  そのため、実際に消費にまわすことのできるお金(消費支出)も212,180円から204,198円と8,000円ほど減少している。
●  自衛の手段を見つけることが大切
  収入も支出も減少し、家計の規模が縮小気味になっているのが現時点の高齢世代の実態のようだ。支出を切り詰めてはいるものの、税・社会保険料等の割合が高くなることで生活費・余暇等の消費にまわせるお金が少なくなり、生活に余裕がなくなっていることがうかがえる。
  悠々自適のセカンドライフは経済的な裏付けがあってこそ実現できるものであるが、現実のセカンドライフの家計収支は年々苦しくなってきているようだ。
  現役世代も楽ではないが、豊かな老後生活を迎えるためには、稼げる現役のうちに公的年金のほかに自衛の手段を見つける必要がありそうだ。
参考:総務省「家計調査年報」
2010.08.30
前のページにもどる
ページトップへ