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「卵巣のう腫」告知における留意点
  卵巣がどのくらいの大きさかご存じですか? 答えは約2cm大。卵巣は子宮の左右に1個ずつある器官で、卵子や女性ホルモンを作る働きをします。卵巣のう腫は、この卵巣の一部にできた袋状の腫瘍の中に液体がたまる病気です。ただ単に卵巣腫瘍といった場合、80〜90%は卵巣のう腫で良性です。
●  種類
【単純性のう腫】
   若い女性によくみられる良性の卵巣腫瘍。小さなもので症状がなければ経過観察することが多いですが、まれに悪性部分が隠れている場合があるので、定期的な検査は必要です。
【皮様のう腫・成熟のう胞性奇形腫】
   内部に脂肪、毛髪、骨、歯などができる腫瘍。良性で小さいものは無症状です。放置すると次第に大きくなり、最終的には手術が必要になります。左右にできたり、再発したりすることがよくあり、高齢期では一部がん化することもあるので、手術をしない場合でも定期的な観察が必要となります。
【子宮内膜症性のう腫(チョコレートのう腫)】
   子宮の内膜が子宮以外の場所(腹腔・直腸・膀胱・肺・胃等)にできるものを子宮内膜症といい、一番多くできる場所が卵巣です。子宮と同じ組織を持つため、月経のたびに卵巣内で出血が起こりドロドロの茶褐色の血液がたまるので、別名「チョコレートのう腫」と呼ばれます。月経の都度大きくなっていくので、いずれ手術が必要ですが、大きくなるまで無症状のこともあります。摘出後も再発の可能性はあります。
●  症状
  卵巣のう腫は、大きくなるまで無症状のことが多く、婦人科検診等で偶然見つかることがほとんどです。しかし、ある程度大きくなったり、破裂したり、小さくてものう腫により卵巣を支える靭帯が捻じれた場合は、突然激しい下腹部痛や吐き気を生じ、短時間の内に卵巣が壊死を起こすので緊急に手術が必要になります。その他の症状としては、頻尿・便秘・腰痛・腹部膨満・不正出血・発熱等があります。
●  治療
  小さいうちは定期的な経過観察としますが、増大傾向にあるものは手術予定となります。特に6cm以上の大きなものは、茎捻転の危険性があるため早期に手術します。手術には下記があります。
   ・のう腫核出術:年齢や挙児希望により、病巣だけを摘出し卵巣を温存します。
   ・卵巣全摘出術:卵巣を摘出します。
   ・付属器摘出術:卵巣と卵管を摘出します。
  術式は、それぞれ「開腹手術」か「腹腔鏡手術」かの2通りがあります。入院期間は1〜2週間程度です。子宮内膜症が原因のチョコレートのう腫などでは、摘出後も低容量ピルや、脳下垂体のホルモンを抑制する点鼻薬等、子宮内膜症に準じた治療法を継続することもあります。
●  ご契約をいただく際には
  卵巣のう腫と診断されてから経過が長いものは良性として考慮されます。卵巣のう腫は良性ですが、保険加入上問題となるのは、悪性腫瘍の混入です。長期入院例や50歳以上の場合は悪性疾患が考慮されるため加入が厳しくなります。悪性を否定するために、必要に応じて診断書の取り寄せが必要になる場合もあります。
  また、「発見された直後のもの」や「卵巣腫瘍」等のあいまいな告知の場合は、加入が厳しくなるかもしれません。特に手術治療をされている場合には、手術の種類や、入院期間などの詳細の告知をすることが大事です。
(上田香十里 株式会社査定コンサルティング代表)
2010.09.06
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